第18話「月兎と天魔の出会い」
「…………いたた…。どうやら無事に惑星ゼロとやらに着いたようですね…。でも何でしょう…その割には地面が痛くないですね…。」
ぐに…。
そんな感触に下に視線を落とす。
自分の下に人が倒れていたことに気が付き急いで体を退ける。
「わっ!?!?な、なんですか!?」
一瞬取り乱すも倒れていた人物に駆け寄り抱き起こす。
意識があるかどうか声を必死にかける。
「う…。」
小さくだが意識はあるみたいで安心する。
倒れていたのは羽?の生えた異様な姿の女の子。
自分と容姿がここまで違う者は見たことがないためかまじまじと見てしまっている。
すると女の子が身をよじりながら目を覚ます。
ゆっくりと目を開けて、一時的に思考停止。
彼女からの視点は薄紫の髪にウサギのような長い耳、前髪は隠れ片目が隠れ暁のような真っ赤な瞳がぼんやりとだが見えていた。
「ん?…ここ…どこ?貴方は…?」
「ボクですか…?えっと…ボクはツキノです。月兎(げっと)という種族です。ボクもさっき起きたばかりなのですよ。」
「ん…よくわからないけど…私は…システィ。えと…種族?………一応…神様の創造物って事になるのかしらね…。」
「神…??神様って………。」
「神、知らない?あー…確か言ってたわねあの胡散臭い意味分かんないやつ。私をこの…んと…惑星ゼロに落としたやつ。」
この時、ツキノが直感で察する。
ああ。この人もあの人から導かれたんだと。
つまりは…
「ボクたち、たぶん…同じやつ。」
「ん??どういうこと?」
一度整理して、話しをまとめるツキノ。
それを落ち着いて聞くシスティ。
「………あぁ…」
話しを理解するとシスティはため息をつく。
理解したはした。
確かに…言ってたなぁ…それっぽいこと。
システィの脳裏にフラッシュバックする。
例の胡散臭いやつ。
「でも…変ですよね。」
「え?なにが?」
「だって…システィさんとボクの世界まったく違うし…時間さえ…」
「…あいつわりと私の大嫌いな神に近しい存在なのよきっと…すごく気にくわないけどね。」
ツキノが辺りをキョロキョロと見回すとそこは何らかの儀式のような魔法陣が記されている遺跡のような場所だった。
まるで召喚されたようなそんな感じ。
この場所からは不思議とパワー的な何かを2人は無意識に感じていた。
システィが落ち着いたのかその場にへたり込む。
「私たちがこうして出会ってしまったのは偶然じゃなく…必然。遅かれ早かれどの道アンタとも出会っていたのよ。…多分ね。」
へたり込むシスティの隣でツキノもへたり込み、目の前に広がる満天の星空を2人で眺めている。
不思議な感覚だった。
それはお互いにだ。
「システィさん。」
「どうしたの?」
「ボク、誰かとこうして星空を見られるのってあまり無くてなんというか…感動してます。すごく綺麗ですね!」
なんとなく…本当になんとなくだがシスティは感じてしまう。
それはアイツとの会話だ。
【???場所】にて
?「システィの力が必要だ。」
「私には関係ない…私はもう…何の力もない。」
?「協力してくれれば、神を殺す力が入るとしたらどうする?」
その言葉に確信は無かった。
あるはずがない。
神を倒す?
不可能極まりない。
でも、あの戦闘で神の手から逃れることが出来ているのは事実。
コイツの存在自体が特別(イレギュラー)なんだわ。
と悟った。
「私は…協力するんじゃないから。私は復讐するために。手を貸して上げる…それでいい?」
?「もちろん。でも、協力する前にその復讐心は無くすべきだ。」
「どういうことよ。この気持ちが消えるわけ…」
?「協力者は複数人いる。それも、システィのような、壮絶な道を辿った者たち。どの協力者も確たる世界で絶大な力や能力、才能に溢れた存在だ。ゆえに…訳ありの者たちの集いだ。」
そうアイツは言っていた。
そんなことを考え込んでいるとツキノが心配そうにこちらに近付いていた。
反射的に驚いて突き飛ばしてしまう。
「大丈夫…でっ!?」
ベシッ!
「あいったぁ!?」
我に返りシスティすぐさまツキノに謝罪。
「ご、ご、ごめんなさい!ツキノさん!!」
ツキノはニヘラ顔で「大丈夫大丈夫」と強がるがシスティは罪悪感で押しつぶされそうだ。
「ごめんなさい。」
「良いんですよ?考えてたんですよね?多分。」
「わかるの?」
「いや…わからないです。ボク、あまりこんな感じで親しく誰かと話したことが…その無くて…あまり慣れてなかったというか。相手の顔色を常に伺ってきた感じですから…。」
苦笑するツキノの表側の顔は笑って誤魔化しているが無理してるように感じたシスティはふと自分の話を語りだした。
ツキノは静かにそれを聞いていた。
星が2人を照らし静かな風が2人を優しく撫でる。
語り終えた時には隣でツキノが泣いていた。
ぼろぼろと大粒の涙をぼろぼろと。
慌ててシスティが慰めるが変な気分だった。
「…システィさん…ボク…そんな事があったなんて…知らなくて………。」
「知ってたら怖いわよ。……貴方は変な人ね。」
「そうですかね…?むふふ…」
「あと、システィって呼びなさい?」
「いいんですか?」
「いいわよ、私もツキノって呼ぶから。」
「それって!友達!?」
飛びつくようにツキノがシスティに覆い被さる。
「友達…。」
システィの瞳はツキノの暁のような瞳を見つめている。
その解答に少し沈黙するがシスティは答えた。
「友達と思うわ。…知らないけど。」
恥ずかしそうに照れくさそうに
初々しい恋人の如く。
システィはこの状況事態に戸惑いが隠せなかった。
「ボク、ここにきてよかったです。」
「………そ。」
「システィは…あ、」
ツキノは自分だけ舞い上がっていた。
システィの過去を知ってしまったからこその不安。
システィがこの場所に来た理由は復讐。
神様への復讐。
ツキノは…次の台詞が出なくなっていた。
「よかったわよ…。」
困惑しているツキノを包み込むような気の利いた言葉にはならないかもしれないがシスティがただ一言呟く。
意外な言葉に思わず息を呑むツキノ。
「え…?」
少しの間を開け再びシスティの口が開く。
システィもどうしていいかわからない。
言葉が迷子になっているようで戸惑っている様子。
「だから…ツキノと友達?になれたから。言ったでしょ?っていうか…私もそんな人と関わったこと無いのよ!だから!わかんないのよ…。」
ツキノがこの時感じたのは、確かに違い、確かに何処か似ている。
姿も、性格も、歩んできた道も違うはずなのに。
きっと…似た者同士。
そんな気持ちでツキノは溢れていた。
だからツキノはシスティを抱きしめる。
優しく抱きしめる。
「…………そうでしたね。ボク、勝手に気を使って逆にシスティのこと傷つけちゃいました。ごめんなさい。」
不意なツキノの行動に体がピクリと反応する。
「ちょっ…いきなりどうしたの?」
「ボクの昔、正確には【あちらの世界】で唯一、心を共にしてくれた人がよくしてくれたおまじないのようなものです。嫌だったらごめんなさいです…。」
決してふざけたような態度は一切無く。
本当に真面目にただ安心を求めているようなそんな優しい表情で抱きしめられている。
お互いの体温が伝わり、徐々にあたたまっていく。
「そういえば…ツキノの話も聞いてなかったわね。」
「ええ。そうでしたね…。せっかくです。ボクの話聞いてくれますか?システィ…?」
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