『悪夢殺人症候群』
漣
第1話 終わらない悪夢
プロローグ - 血塗られた覚醒 -
午前3時17分。高梨晴人は汗まみれでベッドから飛び起きた。
心臓が激しく脈打っている。Tシャツは汗でびっしょりと濡れ、肌に張り付いていた。枕カバーも湿っている。掌を見下ろすと、まだ小刻みに震えていた。
「また…だ」
夢の中で握りしめていたナイフの感触が、まるで本物のように手に残っている。刃が肉を裂く鈍い感触。温かい血液が手に伝う生々しい感覚。そして何より、倒れていく男性の最期の表情——恐怖に歪んだ顔が、瞼の裏に焼き付いている。
18歳の晴人にとって、これはもう見慣れた光景だった。毎夜繰り返される悪夢。夢の中で必ず誰かを殺さなければ、絶対に目覚めることができない。
枕元に置いてある小さな手帳を取り、震える手でペンを握る。日付の横に小さく「1」と記した。今夜殺した人数だ。
最初にこの悪夢が始まった頃——確か3ヶ月前の2月だった——は、夢の中で一人殺せば朝まで安眠できた。むしろ、悪夢から解放されることで深い眠りに落ちることができていた。
しかし状況は日に日に悪化していた。ある日は三人、その次の日は四人。殺さなければならない人数が増え続けている。そして何より恐ろしいのは、夢の中で殺人を躊躇したり、手間取ったりするほど、現実で目覚める時間が遅くなることだった。
一週間前、夢の中で最初の犠牲者——中年女性だった——を殺すのに手間取った日があった。彼女は必死に抵抗し、晴人の手からナイフを奪おうとした。夢の中の晴人は躊躇し、罪悪感に苛まれながらも、目覚めるために彼女を殺さなければならなかった。結果的に目が覚めたのは夕方の5時。丸一日を無駄にしてしまった。
時計を見る。3時17分。まだ夜は長い。しかし、もう眠りに戻る勇気はなかった。再び夢に落ちれば、今度はもっと多くの人を殺さなければならないかもしれない。
晴人は静かにベッドから降り、足音を殺してドアを開けた。廊下に出ると、母親の部屋から静かな寝息が聞こえてくる。起こしてはいけない。この異常な症状のことを、まだ母には話していなかった。
キッチンに向かい、冷蔵庫から冷たい水を取り出す。一気に飲み干すと、少しだけ頭がすっきりした。しかし、夢の中の光景は消えない。殺した男性の顔が、何度も脳裏に浮かんでくる。
見知らぬ人だった。30代後半くらいの、普通のサラリーマン風の男性。夢の中で彼は晴人に向かって何かを叫んでいたが、声は聞こえなかった。ただ、その表情には確かに恐怖があった。そして最期の瞬間、男性の目には諦めのような、悲しみのような感情が浮かんでいた。
なぜ自分はこんな夢を見るのか。なぜ殺さなければ目覚められないのか。晴人には全く分からなかった。
第1章 - 偽装された日常 -
「晴人、顔色が悪いわよ。また眠れなかったの?」
朝食のテーブルで、母の美咲が心配そうに声をかけた。穏やかで優しい母だった。5年前に夫を交通事故で亡くし、それ以来女手一つで晴人を育ててくれている。
美咲は看護師として病院で働いており、人の体調の変化には敏感だった。晴人の異変にも、ここ数ヶ月で気づいているはずだ。
「ちょっと寝つきが悪くて。受験のストレスかな」
晴人は適当な嘘をついた。実際、高校3年生である晴人には大学受験という現実的な問題もあった。しかし、それと比べると、毎夜の悪夢は比較にならないほど深刻だった。
「そうね…。でも最近は寝つきが悪いだけじゃないでしょう?よく昼間まで寝ているし、学校も休みがちになってる」
鋭い指摘だった。確かに晴人は、悪夢で遅く目覚めることが多くなっていた。特に夢の中で殺人に手間取った日は、昼過ぎまで目覚めないことが増えている。
「やっぱり一度、先生に相談してみましょうか」
母の提案に、晴人は内心で冷や汗をかいた。実は既に精神科のクリニックに通院していることを、母は知らない。3週間前から、学校帰りにこっそりと山田メンタルクリニックに通っている。
「そうだね。考えてみる」
曖昧に答えて、晴人は急いで朝食を済ませた。今日は何とか8時に目覚めることができたので、学校に行くことができる。
家を出ると、いつもの通学路が広がっていた。桜並木の道を歩きながら、晴人は自分の状況を整理しようとした。
普通の高校生として生活しなければならない。友人たちとの関係を維持し、授業に出席し、部活動にも参加する。誰にも悟られてはいけない。毎夜人を殺す夢を見ているなどと知られたら、確実に異常者扱いされるだろう。
学校に着くと、いつものように友人たちが声をかけてきた。
「おはよう、高梨」
「おはよう」
「今日も遅刻ギリギリだな。最近どうしたんだ?」
同級生の田中が心配そうに聞いてきた。田中は中学時代からの友人で、晴人の変化に気づいている一人だった。
「受験勉強で夜更かししてるんだ」
「そうか。でも体だけは気をつけろよ。明らかに痩せてるし、目の下にクマもできてる」
鏡を見れば分かることだった。この3ヶ月で体重は5キロ近く落ちている。食欲もなく、何を食べても味がしない日が多い。
「ありがとう。気をつけるよ」
適当に答えて、晴人は自分の席に向かった。
1時間目の現代文の授業中、晴人は窓の外を眺めながらぼんやりと考えていた。今夜もまた、あの悪夢を見るのだろうか。今度は何人殺さなければならないのか。
ふと、教師の声が耳に入ってきた。
「——この小説では、主人公の精神的な葛藤が描かれています。罪悪感というものは、時として人の心を蝕み、現実と幻想の境界を曖昧にしてしまうことがあります」
罪悪感。その言葉が、晴人の胸に突き刺さった。
自分の感じているこの重苦しい感情は、確かに罪悪感だった。夢の中とはいえ、人を殺していることに対する罪悪感。そして、そんな自分を誰にも理解してもらえないことに対する孤独感。
授業が終わっても、晴人はその言葉が頭から離れなかった。
第2章 - 秘密の通院 -
放課後、晴人は友人たちの誘いを断って、一人で学校を後にした。
「今日も塾?」
「うん、そんなところ」
また嘘をついた。実際の目的地は、駅前にある山田メンタルクリニックだった。
電車に乗り、窓の外を流れる景色を眺めながら、晴人は初めてこのクリニックを訪れた日のことを思い出していた。
3週間前の金曜日。その前夜は特にひどい悪夢だった。夢の中で6人も殺さなければならず、最後の一人——小学生くらいの女の子だった——を殺すときに、どうしても手が動かなくなった。彼女は晴人を見上げて、無邪気に笑いかけてきた。その笑顔があまりにも純粋で、晴人は涙を流しながらナイフを振り下ろした。
目が覚めたのは午後3時だった。学校は当然欠席。母親に体調不良と告げて、一日中ベッドで悪夢の余韻に苦しんでいた。
その日の夜、パソコンで「悪夢 治療」と検索した。いくつかのサイトを見ているうちに、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉を知った。強いショックを受けた後に現れる症状の一つとして、悪夢があることを知った。
翌週、晴人は勇気を振り絞って山田メンタルクリニックに電話をかけた。
「初診の場合は、親御さんの同伴をお願いしているのですが」
受付の女性にそう言われたとき、晴人は困った。母親にこの症状を説明することは、まだできなかった。
「18歳なので、一人で受診することはできませんか」
「そうですね…。一度先生にご相談してみます」
結果的に、晴人は一人での受診を許可された。ただし、必要に応じて家族との面談も求められる可能性があると説明された。
クリニックに着くと、晴人は受付で名前を告げた。
「高梨晴人です。5時からの予約です。」
「はい、かしこまりました。まず、こちらの問診票にご記入ください」
渡された用紙には、症状や生活習慣について詳細な質問が並んでいた。しかし、症状に該当するところが見当たらず、一旦睡眠について悩みがある、と言うところに丸をした。そのあとを考える。
「毎夜人を殺す夢を見る」と正直に書いても信じてもらえるだろうか。
結局、その他の欄に、「暴力的な内容の悪夢を毎日見る。夢の中で特定の行動を取らなければ目覚められない」と書いた。
第3章 - 山田医師との対話 -
診察室に呼ばれたとき、晴人は緊張で手のひらに汗をかいていた。
山田医師は50代前半くらいの穏やかな男性だった。白髪交じりの髪と優しい目をしており、話しやすい雰囲気を醸し出していた。
「高梨さん、初めまして。山田です。今日はどのような症状でいらっしゃいましたか」
晴人は深呼吸をして、自分の症状について話し始めた。もちろん、最初から全てを詳細に話すことはできなかった。
「悪夢に悩んでいます。毎日、暴力的な内容の夢を見て、それがとても現実的で…」
「どのくらい続いていますか?」
「3ヶ月ほどです。最初は時々だったんですが、最近は毎日です」
山田医師は静かに頷きながら、メモを取っていた。
「その夢の内容について、もう少し詳しく教えてもらえますか。話せる範囲で構いません」
晴人は言葉を選びながら答えた。
「夢の中で…人を傷つけなければならないんです。それをしないと、目覚めることができません」
「なるほど。そして、その夢を見ることで日常生活に支障が出ている?」
「はい。夢の内容によって、目覚める時間が変わります。うまくいかないと、昼過ぎまで眠ってしまうことがあります」
山田医師は興味深そうに頷いた。
「とても特徴的な症状ですね。他に変化はありますか?食欲、集中力、人間関係など」
「食欲はありません。集中力も落ちています。友人との関係は…普通を装っていますが、正直辛いです」
「家族には相談していますか?」
「まだです。心配をかけたくなくて」
山田医師はしばらく考え込むような表情を見せた後、質問を続けた。
「高梨さん、何か特別なストレスや、過去のトラウマ的な体験はありませんか?」
「トラウマ…」
晴人は首を振った。しかし、その瞬間、胸の奥に妙な違和感を覚えた。何か忘れているような、思い出したくないような、説明のできない不安感が湧き上がってきた。
「記憶がはっきりしないことでも構いません。幼い頃の体験でも」
「特に…思い当たりません」
しかし、そう答えながらも、晴人の心の奥では何かがざわめいていた。まるで封印された記憶が、扉の向こうで音を立てているような感覚だった。
「分かりました。今日のところは、症状を和らげる薬を処方します。そして次回、もう少し詳しくお話を聞かせてください」
山田医師は処方箋を書きながら続けた。
「高梨さんの症状は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性があります。強いショックを受けた後に現れる症状の一つに、反復する悪夢があります」
「PTSD…」
「心的外傷後ストレス障害です。ただし、診断を確定するには、もう少し詳しい検査と問診が必要です」
晴人は薬を受け取りながら、医師の言葉を反芻していた。心的外傷。強いショック。しかし、そんな記憶はないはずだ。少なくとも、思い出せる範囲では。
「薬は寝る前に服用してください。副作用として眠気が強くなることがありますが、精神の安定が図れるお薬なので」
「分かりました」
「それと、もし可能であれば、次回はご家族と一緒にいらしていただけますか。治療には家族の理解と協力が重要です」
晴人は曖昧に頷いた。母親にどう説明すればいいのか、まだ分からなかった。
第4章 - 薬への希望と絶望 -
その夜、晴人は初めて処方された安定薬を服用した。
普段より早い時間に眠気が襲い、晴人は希望を抱いた。もしかすると、この薬で悪夢から解放されるかもしれない。
しかし、その希望は無残にも砕け散った。
薬を飲んでも、悪夢は変わらずやってきた。それどころか、いつもより鮮明で、より現実的だった。今夜は7人。老人、中年女性、若い男性、主婦らしき女性、学生、サラリーマン、そして最後に制服を着た女子高生。
特に最後の女子高生を殺すとき、晴人の罪悪感は頂点に達した。彼女は晴人と同じくらいの年齢で、どこかで見たことがあるような気がした。もしかすると、同じ学校の生徒かもしれない。
夢の中で彼女にナイフを向けたとき、彼女は涙を流しながら「どうして」と呟いた。その声が、あまりにもリアルで、晴人は目覚めた後もその声が耳から離れなかった。
目が覚めたのは午後1時だった。また学校を休むことになった。
薬を飲んだのに、症状は改善するどころか悪化していた。絶望感が晴人を包んだ。
第5章 - 母への部分的な告白 -
3日間連続で学校を休んだ晴人を見て、母親の美咲はついに黙っていられなくなった。
「晴人、もう我慢の限界よ。一体何が起きているの?」
その日の夕方、リビングで母親と向かい合って座った晴人は、ついに真実の一部を話すことを決意した。
「母さん、実は…精神科に通っているんだ」
美咲は驚いた表情を見せた。
「精神科?いつから?どうして黙っていたの?」
「3週間前から。心配をかけたくなくて」
「何の症状で?」
晴人は言葉を選びながら答えた。
「悪夢です。毎日、とてもリアルで暴力的な悪夢を見るんです。それで眠りが浅くなって、昼間まで寝てしまうことが多くて」
美咲は晴人の手を握った。
「どうしてもっと早く話してくれなかったの?一人で抱え込んで、どれだけ辛かったでしょう」
母親の優しさが、かえって晴人の罪悪感を深めた。毎夜人を殺す夢を見ているという全ての真実を話すことは、まだできなかった。
「先生は何て言っているの?」
「PTSDの可能性があるって。でも、原因になるような出来事に心当たりがない」
美咲は考え込むような表情を見せた。
「PTSD…。晴人が小さい頃に、何かショックな出来事があったかしら」
「母さんは何か思い当たる?」
「うーん…。お父さんが亡くなったときは、晴人はもう中学生だったし。それより前で、特別なことといえば…」
美咲は何かを思い出そうとするような表情を見せたが、すぐに首を振った。
「特に思い当たらないわね。でも、次回の診察には私も一緒に行かせてもらえる?先生にも相談したいし、家族として何かできることがあるかもしれない」
晴人は頷いた。母親の協力は心強かった。
「ありがとう、母さん」
「家族なんだから、当然よ。一人で抱え込まないで、一緒に治していきましょう」
その夜、晴人は久しぶりに母親に甘えるような気持ちになった。しかし同時に、まだ隠していることがあるという罪悪感も抱いていた。
第6章 - 症状の急激な悪化 -
母親に症状を打ち明けた翌日から、晴人の悪夢はさらに激しさを増していた。
まるで、秘密を話したことに対する罰のように。
今夜は10人だった。
夢の中で、晴人は見知らぬ街を歩いていた。商店街のような場所で、たくさんの人々が行き交っている。その中から、晴人は次々と標的を選んで殺していかなければならない。
老人、中年男性、若い女性、子供…。一人ひとりの顔が、これまでになく鮮明だった。そして全員が、殺される瞬間に晴人を見つめ、何かを訴えかけているような表情を見せた。
特に5人目の犠牲者——小学校低学年くらいの男の子——は、晴人を見上げて「おにいちゃん、なんで?」と聞いてきた。その純粋な疑問が、晴人の心を深く傷つけた。
それでも殺さなければ、目覚めることはできない。晴人は涙を流しながら、一人また一人とナイフを振り下ろしていった。
10人目を殺し終えたとき、夢の中の晴人は膝から崩れ落ちた。周囲には10の死体が横たわっている。血の海の中で、晴人は嗚咽を漏らした。
目が覚めたのは午後4時だった。
ベッドから起き上がることもできないほど、精神的に消耗していた。このままでは、本当に狂ってしまうかもしれない。
母親が心配して部屋を覗きに来たが、晴人は体調不良と言って布団にくるまったままでいた。
第7章 - 二度目の診察 -
翌週、晴人は母親と一緒に山田医師のクリニックを訪れた。
診察室には、晴人、美咲、そして山田医師の3人が座っていた。
「お母様、息子さんの症状についてお聞かせください」
美咲は心配そうに答えた。
「この1週間で、さらに悪化しているようです。ほとんど毎日学校を休んでいますし、食事もほとんど取りません」
山田医師は晴人に向かって聞いた。
「薬の効果はいかがですか?」
「効いていないようです。むしろ、症状は悪化しています」
「悪夢の頻度や内容に変化はありますか?」
晴人は少し躊躇した後、答えた。
「頻度は毎日変わりませんが、内容がより…激しくなっています。そして、夢の中で行わなければならないことの規模が大きくなっています」
山田医師は詳しく聞こうとしたが、母親の前で具体的な内容を話すことは、晴人にはできなかった。
「お母様、晴人さんの生育歴について、もう少し詳しくお聞かせください。特に幼児期から学童期にかけて、何か特別な出来事はありませんでしたか?」
美咲は記憶を辿るような表情を見せた。
「特に大きな出来事は…。強いて言えば、晴人が7歳のときに引っ越しをしたことくらいでしょうか」
「引っ越し?どちらからどちらに?」
「地方の小さな町から、東京に出てきました。主人の仕事の都合で」
山田医師は興味を示した。
「その引っ越しは、晴人さんにとってストレスになりましたか?」
美咲は晴人を見た。
「どうだった?覚えている?」
晴人は首を振った。
「あまりよく覚えていません。ただ、なんとなく…急だったような気がします」
「急な引っ越しだったのですか?」美咲に向かって山田医師が聞いた。
美咲は少し躊躇するような表情を見せた。
「ええ、まあ…。主人の仕事の都合で、急に決まったんです」
山田医師は何かを感じ取ったようだったが、それ以上は追求しなかった。
「分かりました。次回までに、もう少し詳しく薬の調整をしてみましょう。そして、可能であれば、その頃の写真や日記などがあれば、記憶を整理するのに役立つかもしれません」
診察を終えて帰る途中、晴人は母親に聞いた。
「母さん、僕が7歳のときの引っ越しって、本当に急だったの?」
美咲は少し困ったような表情を見せた。
「ええ、そうね…。お父さんの仕事の関係で」
何か隠していることがあるような気がしたが、晴人はそれ以上聞くことができなかった。
エピローグ - 深まる謎と迫りくる真実 -
その夜、晴人の悪夢はついに12人に達した。
これまでで最も多い人数だった。そして、最後に殺した人物——中年男性——の顔が、どこかで見たことがあるような気がしてならなかった。
優しそうな顔立ちで、どこかで見たことがあるような……
夢から覚めた晴人は、その男性の顔が頭から離れなかった。誰だろう。なぜ見覚えがあるのだろう。
そして、母親が引っ越しについて話すときの、あの困ったような表情も気になっていた。
何かが隠されている。自分の過去に、重要な何かが隠されている。
窓の外を見ると、東の空がうっすらと明るくなり始めていた。また一日が始まろうとしている。しかし晴人には、その一日を普通に過ごす自信がなかった。
悪夢はまだまだ続く。そして、その悪夢の奥に隠された真実が、少しずつ姿を現そうとしている。
晴人はまだ知らない。自分が7歳の時に経験した出来事が、今の悪夢の根源にあることを。
封印された記憶が動き始めている。やがてその記憶が完全に蘇ったとき、晴人の世界は完全に崩壊することになる。
しかし今はまだ、その真実は闇の中に隠されている。
明日もまた、晴人は普通の高校生として振る舞わなければならない。誰にも悟られることなく、この異常な症状と向き合いながら。
そして今夜もまた、悪夢の世界で人を殺すことになるだろう。
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