【原盤】スィーフィード・レクイエム

Mustang_TIS

Vol.1 ~禁忌の魔導書と魂の裁き~編

序章 神々の戦い! 神話から始まった世界

序章-1 創造の神と虚無の神


 はるか昔、これは『この世界が創造』された時に遡る

 かつて世界は混沌こんとんに包まれていた。ことわりも存在せず、光も影も、命すら形を持たぬ虚無きよむの中に、ただ二柱ふたはしらの竜神がいた。


神竜神しんりゆうしんスィーフィード。

 創造をつかさどる神――。天を裂くほど巨大なその姿は、輝く光の粒子をまとい、銀白の神々しさを放つ竜であった。

 その咆哮ほうこうは天地を開き、広大な大地と空を生み出した。

 彼の吐息は風を生み、世界の基盤を形作る炎を落とした。

 やがてその炎は冷え、山となり、川となり、森となる。水をめぐらせ、草木を繁らせ、動物を歩ませ、最後に人間という存在を世に放った。

 思いを持ち、言葉を交わし、知恵を紡ぎ彼らこそが世界の調和を支えるものだと、スィーフィードは信じた。


 しかし、この創造を憎むものがいた。


魔竜神まりゆうじんアークリーク。

 混沌こんとんと破壊の化身――。虚無きよむこそが完全なる秩序であると信じ、あらゆることわりを打ち砕かんと闇の炎をその身に宿していた。

 その翼は星々の光を覆い隠し、歩むだけで命の気配が消え去るほどの瘴気しようきをまとっていた。

 彼は世界が存在すること自体を許さなかった。スィーフィードが生み出したものを焼き払い、全てを無へと還そうとした。

 スィーフィードが『生』を創るならば、アークリークは『死』を造る。

 彼は世界が混沌こんとんに飲み込まれることこそ、真のことわりであると信じた。

 彼の影が地に落ちるたび、それはやがて形を持ち、邪悪なる魔の者――魔族 となった。


序章-2 そして、神々の戦争が始まった。


 天地は砕け、光は揺らぎ、無数の命が消えていく。

 スィーフィードはその巨体をもってアークリークの虚無きよむの力にあらがい、神聖なる雷と嵐を巻き起こした。

 だがアークリークも負けはしない。闇の嵐を呼び、世界ごと飲み込もうとした。

 戦いは長く続き、ついにスィーフィードはアークリークの喉元に喰らいついた。

 その牙が竜神の咽喉いんこうを裂いた刹那せつな、暗黒の嵐が凄まじい悲鳴とともに四散しさんした。

 スィーフィードの雷は天地を震わせ、アークリークの闇は星々を呑み込んだ。

 その戦場は、まるで命の奔流ほんりゆうそのものだった。

 大地は焦げ、空は裂け、天と地の境がくずれ落ちていく――。


 その瞬間――神々の戦争は終結した。


 アークリークは重傷を負い、次元の狭間へと追いやられた。彼の力は封じられ、世界は再び秩序ちつじよを取り戻した。

 しかし、スィーフィードもまた深い傷を負い、静かに世界の影へと消えていった。

 だが、二柱ふたはしらの竜神の影響は消えはしない。

 スィーフィードの創造した世界は今も続き、しかしアークリークの残した魔の力もまた、闇の奥でうごめいている。


序章-3 そして――伝承が語る。


 あの時、スィーフィードがアークリークの喉元を裂いた際に、抜け落ちた牙。

 それは宙を舞い、落ちるごとに形を変えた。

 輝く白銀の軌跡を描きながら、それはやがて剣となった――。


聖魔法剣せいまほうけんソウルドラグナー――。


 神々の力を受け継ぐその剣は、悠久の時を超え、セルキナー家へと受け継がれてきた――。

 その刀身には聖なる力が宿り、魔を斬り裂く光を湛えているという。


 この物語は、神々が作りし世界で、伝説の剣の伝承者とその周りの人々が、様々な事件へと立ち向かっていく物語である。

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