第3話 因縁ある織機
30年前、父、本木一也がしかけた仕手戦に敗れ、これが原因で両親が亡くなった。息子、吉田二郎は両親の弔いを済ませた後、仕手戦の場となった愛知県のトヨタ織機本社を訪れた。父の遺言は「まともな不動産屋になれ。」だった。応対に出てきたのは当時副社長の吉田孝政氏だった。父、本木一也との戦いを持久戦で勝ち抜いた男だ。二郎はまだ若かった。「父がお世話になりました。もう二度と株には手を出しません。父の残務整理をしたあと、これからは本業の不動産業だけでなんとかやっていこうと思います。株はもうこりごりです。自分は名前も変え、これからは父の名の本木をやめて母方の吉田を名のろうと思います。吉田副社長さんと同じ名前です。最後に、父は社長の豊雅年さんに大変お世話になったと言っていました。本日お会いできないのは残念ですが、よろしくお伝えください。」と挨拶する。吉田副社長からは、「お父様にはお悔み申し上げます。お元気で過ごされることを祈っています。」といって二人は別れた。その時のことが、ついこの間のように思い出された。あれからもう30年だ。今や、トヨタ織機は世界最大の自動車会社の親会社なのだ。トヨタグループ会社の株式を何兆円も保有している。
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