笑顔
初めて買ってもらった習字道具が嬉しかったらしい
弟はなんにでも墨汁で笑顔を描いていた
壁や障子に落書きをした時には雷を落とされていたが
父母は割合寛容な人たちだった
祖母を荼毘に付す前夜
白い布をかぶせられたその顔にも 弟は落書きをしてしまった
子供の手で描かれた単純な線 満面の笑み
分厚い布団の下に寝かされた冷たい体が 動いたように見えた
弟の肩をつかんで 祖母の傍から引きはがす
墨を頬につけた無邪気な犯人は
おばあちゃん また話そうねえ
手を振り 手を振り それへ今にも亡骸が応えてしまうのではないかと畏れて
ぴしゃんと 襖を閉じた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます