おぞまし
空空
緑の空き瓶
空き瓶を並べて売っている
あの店は芥に値段をつけている
母様がそう云うから
わたしはそのまま云ってみた
あなたのお店は芥に値段をつけているの
店主は澄ました顔で緑色の硝子瓶を手に取った
お嬢さんにはこれをあげましょうね
あたしの売るのが芥なら
お嬢さんが持ってるものみんな芥さ
徳利みたいな硝子の瓶
中身はなんにも入ってない
振ったり 覗いたり 放ったらかしたり
瓶はやっぱりただの瓶
母様に知れると罰が悪いので
わたしは引き出しの奥へそれを隠した
母様に隠し事をするのはそれが初めてだった
たまに取り出して眺めては 店主の言葉を思い出す
これが芥なら みんな芥
死んだらあの世へなんにも持っていけないんですからね
燃されるのを待つだけなら
すべて芥じゃあないですか
◆
少女は家の窓から一切合切を投げ出し始めた
気に入っていたブラウス
誕生日にもらった本
憧れていた母の口紅
食器 棚 椅子 果物
驚いた母親も締め出して
なにもかもなくなった部屋の中
赤ん坊のように丸くなった
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