『実験衣 ポケットに今日、青葉一枚。
緑を知るにはまだ遠い夏。』
目を引くのは、初句の『実験衣』に対する差し色のように輝くのは三句の『青葉一枚』。
青々とした若い葉は何かの始まりを予感させる。字余りの感触は、ふと、ポケットに入っていた青葉を確認する時間を共有しているようにも感じられる。
この歌と同じ場所に収められているのが次の歌。
『浅葱色した空だよと君が指す
永遠みたいな五秒が過ぎて』
初句の『浅葱色』。ターコイズブルーとも呼ばれる、またしても薄い藍色や明るい青緑とも現される緑には遠い色。
ただ、続くのは『した空だよと』という二句。青々とした晴れ渡った空を指している君。
青々としているのに浅葱色。
青葉なのに緑色(には遠い)。
色使いの心地よさが、歌中に浮き出てくる二人の登場人物のドラマを彩っているように思えました。
単体でも魅力的な歌ですが、この二つが同じ場所にあることが素敵でした。
素晴らしい作品をありがとうございました。