向日葵色の絵の具は、切ない想い出の色

 ――主人公である佐祐理が描く絵は、いつも黄色が多めに使われていた。

 伝説のパレット欲しさにコンクールで美術部の部長と勝負することになった佐祐理は、友人である初夏に絵のモデルになってほしいと懇願する。
 佐祐理はなぜ初夏に絵のモデルになってほしいとお願いしたのか?
 佐祐理はなぜ絵に黄色を多く使うのか?
 佐祐理はその答えを絵の中に託します。
 
 同性間の恋愛だからこそ起こるすれ違いの描き方や、読者の共感を呼ぶ、ままならない感情の描写が印象的でしたが、判断を読み手に委ねる結末の描き方が、余韻となって作品全体がぐっと引き締まっていたように思います。文字数以上に、満足感のある作品でした。

 佐祐理が絵の中にこめたメッセージと謎の答えは、ぜひあなたの目で確かめてみてください。