十首連作「淵を覗けば」
貝塚伊吹
十首連作 「淵を覗けば」
声上げて 赤に染まりし 十五寸
垢に塗れて 死ぬ五尺半
刻まれた 皺の数程 笑ったか
暗く悲しい 谷ではないか
旅の手記 書き綴らんと 意気込んだ
三十一文字も 満たせぬ里程
指折りに あと何日と 誕生日
昔晴れの日 今忌々し
彼の人の 背を追い続け 幾千夜
墨染に数える 老い一つ
声は擦れ 目の輝きも 濁り消え
花も月露も 我を誘わぬ
雪溶けて 花に鳥鳴き 山萌えて
子らは遊べど 胸に凍雲
夢を見て 光求めた この眼
今は昔と 金を眺める
天を衝く 若竹なりと おぼゆれど
枯れ枝の息 音もせぬなり
枯れ枝も それを見もせぬ 若枝も
命六文 所詮木の枝
十首連作「淵を覗けば」 貝塚伊吹 @siz1ma
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