第8話 劉邦、魏を推し出す!
関羽と張飛に囲まれ、転がっている劉邦は、信じられないものを見たかのように、今さらながら絶叫した。
劉邦: 「ゲェーッ!! 関羽と張飛!!」
その顔には、先ほどの「ゲェーッ!!呂布!!」とは比べ物にならないほどの、心底からの驚愕が浮かんでいる。
まさに、あの漫画の顔そのものに。
しかし、劉邦はすぐに立ち直り、韓信にした仕打ちを完全に棚に上げて、得意げに、しかし必死に魏呉蜀の三つ巴を語り始めた。
劉邦: 「おいおい、おめぇら! 何をそんなに怒ってんだよ! 見ろよ、おめぇらが天下統一できなかったのは、俺の血筋のせいじゃねぇ! その後、中国は魏・呉・蜀の三つ巴になったんだろ? それぞれが皇帝を名乗って、あっちこっちでドンパチやってたじゃねぇか! それで天下が取れるわけねぇだろ! なんであんなに分裂してんだよ、アホか!」
劉邦は、まるで自分が天下統一した時代の方がよほど優れていたとでも言いたげに、熱弁を振るう。
「だいたいな、魏の高祖だか知らねぇが、あの曹操の息子、曹丕は、ちゃんと献帝から帝位を禅譲されたんだぜ? それってつまり、魏の方が正統後継者だってことではないか!」
劉邦は、まるで現代の歴史教師が教え子に説明するかのような口調で、身振り手振りを交えながら力説した。
彼の頭の中では、彼自身の王朝が滅亡し、末裔が混乱を引き起こしたという事実が、完全に抜け落ちていた。
劉邦のこの、まるで頭の中身が事故レベルで、どうにかなってしまったかのような発言に、これまで怒りながらも冷静さを保っていた陳宮と、面白がっていた呂布の両目が、大きく見開いた!
あの涼しい顔をした陳宮すら、愕然とした表情で言ってしまいました。
「な、なんだと……!? 曹操が『高祖』だと? そして、その息子が『正統』だと申すか!? 貴方様が築いた『漢』の正統が、私たちが血を流してまで抵抗した、あの
呂布は、それまでニヤニヤしていた顔が、一瞬にして凍り付くほどに。
「ガハ……ハ……貴様……! 陳宮の言った通り、あの曹操や司馬懿ごときに、漢の天下を奪われただと……!? まことに馬鹿なことを……! 俺が、この呂布が、あの虫けらどもに敗れるなど、あってはならんことだろうがあ!!ぶち殺されてえかぁ!!!」
二人は、自分たちの死後、自分たちが最も憎んだ魏に天下が移ったという劉邦の言葉に、まことに絶望的なまでの衝撃を受けていた。
史実の彼らは、魏によって命を落とした、まさしくその「犠牲者」だからである。
だが、頭が悪くなった劉邦は、呂布と陳宮の絶望的な表情には全く気づかず、一人で熱弁を続けておった。
劉邦: 「見てみろよ! 曹操はな、確かにちょっと性格に問題があったかもしれねぇが、乱世の姦雄、ヒーローだぜ!? 時代の流れを読み、新しい統治の仕組みを作ろうとしたんだから、そりゃあ認めざるを得ねぇだろう! そしてその息子、曹丕も優秀だった! 文武に優れて、帝位を禅譲されるほどの器量があったんだからな! まさに漢の終わりを飾るにふさわしい英雄漢だったってわけだ!」
劉邦は、まるで歴史の教科書を読むかのような、熱血教師口調で熱弁を振るう。
「さらに言えば、司馬懿! あいつは、確かにちょっと陰湿なところがあったが、冷静沈着で、常に大局を見てた! ああいう奴が、最終的に天下を統一するんだよ! おめぇらじゃ無理だ! だからな、おめぇらが魏に滅ぼされても、そりゃあ仕方がなかったんだ!」
劉邦の、完全に的外れな「熱弁」に、関羽と張飛は、陳宮と呂布への同情を禁じ得なかった。
そして、劉邦への怒りを再燃させた。
関羽: 「劉邦っ!! 貴様は、まことに愚か者か!? 我らが崇拝する漢の正統を、自らの手で貶め、挙げ句の果てに、あの奸賊どもを褒め称えるとは! 陳宮殿と呂布殿がどれほどの思いで、あの魏に立ち向かったか、貴様に理解できぬのか!!陳宮と呂布に謝って、死ね!!」
張飛: 「そうだぞ、劉邦のジジイッ!! 呂布の旦那は、俺の義兄貴を何度か助けた恩もあるんだぞ! 陳宮の旦那だって、筋を通した立派な
劉邦の背後で、韓信の目は、もはや完全に殺意に満ちていた。
彼は、今すぐにでも劉邦の背中に剣を突き刺さんばかりの勢いで、罵詈雑言を吐き出した。
韓信: 「劉邦様っ!! まことに聞いておれば、吐き気がするほどのご発言ですな!! 貴方は、自身の罪を認めず、他者の功績を歪め、挙げ句の果てには、自らの王朝の宿敵を褒め称えるとは! まことに『恥知らず』の極み! 私を処刑した貴方の人格が、これほどまでに『崩壊』しておるとは、まことに感慨深いものですな! もう二度と、私の名を口にするなっ!!吐き気を催します!!」
項羽もまた、劉邦の頭の中身の崩壊に呆れつつも、怒りの罵倒祭りを続けた。
項羽: 「おい、劉邦っ!! 貴様が、何が『背水の陣』だ! その言葉は、まことにわしが貴様を追い詰めて、貴様が『四面楚歌』の絶望を味わったからこそ生まれた言葉であろうが!! その『四面楚歌』を作ったのは、このわしではないか! 貴様は、まことに『人の功績を盗む泥棒』めが!こざかしいわ!この日本の生徒殿に、まことの歴史を伝えてやらねばならん!『四面楚歌』や『背水の陣』の本当の創造者は、貴様ではなく、この西楚の覇王、わし項羽じゃ! 貴様は、まことに『嘘つきの化け物』めがっ!!死ね!!くたばれ!!塵芥と化せ!!」
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