どうやら劉邦さんは、劉備玄徳さんに色々と物申したいようです!!
こだいじん
第1話 レポート一個で大変な事になりました
東京のとある高校の放課後、歴史研究室。
教師である吉田先生は、山積みのレポートにため息をついていた。
特に目を引くのは、生徒である桜木ハヤトの提出した一冊。
表紙には力強く「項羽と劉邦:真の英雄はどちらか!?」と題されている。
吉田先生は、眉をひそめながらページをめくり始めた。
そこには、横山光◯漫画そのままの熱い描写と、時折混じるゲーム用語に苦笑が漏れる。
だが、読み進めるうちに、レポートから奇妙な「気配」を感じ始めた。
紙面から墨の香りが立ち上り、どこからか、戦場のざわめきが聞こえてくるようだ。
その時、レポートの最後のページが、まばゆい光を放ち始めた。
光が収まると、研究室の床には、信じられない光景が広がっていた。
「ぬんっ!!」
光の中から現れたのは、身の丈高く、猛々しい眼光を放つ男──項羽その人だった。彼の隣には、背丈は低いが、何とも言えないドヤ顔を浮かべた男──劉邦。
そして、やや離れた場所に、狐につままれたような顔で立ち尽くす韓信の姿も見える。
彼らは、まるで舞台装置のように現れた日本の高校の教室に、ポカンと立ち尽くしていた。
しかし、項羽の驚きは一瞬で怒りへと変わった。彼が目にしたのは、壁に貼られた歴史年表の一部。
「秦の滅亡」「楚漢戦争」の文字が目に入ったのだ。
「なんと!? この貼り紙は!? 『楚漢戦争』とあるが、その後の世に、わしの覇業は記されておらんではないか!!」
項羽は、年表を指差し、怒りに声を震わせた。その視線は、すぐに隣の劉邦に固定される。
「この小物めがっ!! 貴様が、わしの天下を奪った挙句、歴史の表舞台から消し去りおったのか!! 無能の極みめ!!」
項羽の雷鳴のような声が研究室に響き渡る。吉田先生は椅子から転げ落ち、桜木ハヤトは目を丸くして立ち尽くしている。
「わしこそが西楚の覇王! 力も、武も、愛も、全て貴様など足元にも及ばぬわい! なぜわしがこの世に『無い』ことになっておるのだ!? 馬鹿馬鹿しい!!」
劉邦は、項羽の激昂をどこ吹く風とばかりに聞いていたが、ここぞとばかりに前に出て、ドヤ顔で言い放った。
「ハッ! 馬鹿馬鹿しいのはおめぇの方だよ、項羽! 歴史は結果が全てだろうが! おめぇは確かに強かったさ。一騎当千だとか、虞美人だとか、そりゃあ派手なもんだったな!」
劉邦はニヤリと笑う。項羽の顔がさらに怒りで歪む。
「だがな、最後に天下を取ったのはこの俺様だぜ! おめぇは力が全てだと嘯いて、結局民の心は掴めなかった! 仲間さえも、まともに使いこなせなかったじゃねえか!」
項羽は、劉邦の言葉にさらに血が上った。
「黙れ、この下衆めが! わしが誰を重用しようと、貴様に指図される筋合いはないわ! 貴様のような、人の後ろに隠れてばかりの臆病者が、よくもぬけぬけと天下を取ったなどと言えるものだ!!」
劉邦は肩をすくめた。
「臆病者で結構だぜ、天下は取ったからな! おめぇさんみたいに、無駄にプライドばっかり高くて、人望のない奴にゃ、一生分からねぇだろうがよ!」
その時、これまで口を挟まなかった韓信が、ポカンとした顔で呟いた。
「…あの…ここは、一体…?」
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