第五話「王女様、性格バグってる件」

ギルドの依頼掲示板。そこに貼られた一枚の紙が、俺たちの運命を変えた――いや、ちょっとだけメンドくさくした。


【依頼名】王女殿下の村視察に同行・護衛せよ

【ランク】D〜C相当

【報酬】2000G+昼食付き

【備考】王族につき、言動には注意。


植田「王女の護衛って……マジ?」

八木「え、メイドとかいないん?オート護衛機能搭載してないん?」

植田「そんな装備王族にねぇよ」

受付嬢「あー、これね。王都からやってきた視察らしいけど……その王女、ちょっと性格にクセがあるのよね〜」

植田「クセってなんすかクセって」

受付嬢「前に護衛に就いたCランク冒険者、ブチ切れて逃げたらしいわよ?」

八木「……ワイらDランクなんやが?生きて帰れる未来、ある?」

植田「まぁ報酬も出るし、昼メシ付きだし……行くだけ行ってみるか」

八木「動機が高校生のバイト感覚なんよ」


村の広場・王女お出まし

 そしてその日。

 村の広場に集まった人々の前に、馬車が到着した。

馬車の扉がバンッと開き、中から現れたのは――


???「民よ! わたくしの美貌と優雅さにひれ伏しなさい!」

植田「おい八木……あれが王女か?」

八木「たぶん。いや、絶対。ていうか他にいない」


 現れた少女は、見た目15歳くらい。金髪縦ロールでティアラをつけ、ゴスロリドレスをヒラッと翻して高笑い。


王女「わたくしが王女・アリシア=フォン=フェルゼンブルグ三世!今日は気まぐれで貴村を見てあげるのよ!光栄に思いなさい!」

植田「わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

八木「クッソバグってんな」

植田「お前思ってても口に出すなよ!」

アリシア「そこのガキども!あんたたちがわたくしの護衛なの!?」

植田「ガキ言うなチビがよお」

八木「てか俺180あるし、目線上からで見下してるのお前のほうだからな」

アリシア「うっさいわね!わたくしが上!あんたたちは地面!処刑するわよ!」

植田「ヒエラルキーが地層」

八木「草より下なん?」


村視察中

 アリシア王女は気ままに村の中を歩きながら、好き勝手にコメントを飛ばす。

アリシア「この花は美しくないわね!根っこから抜いて!あとそこの井戸、可愛くないから撤去して!」

植田「理不尽すぎて村民のHPが削られてる」

八木「いま村人にデバフ《精神汚染》かかってるわたぶん」

 しかし王女はまったく気にせず進んでいく。

アリシア「でもこのリンゴはいいわ!赤くて可愛い!さすが私のセンス!」

植田「いや育てたの農家な!」

八木「収穫したの頑張って働いてる村人!」


襲撃イベント、発生

 そんな最中、突然森のほうから唸り声が聞こえてきた。


???「グルルルルル……!」

植田「なんか来た!?」

八木「おい王族のイベント、だいたい襲撃くるよな!?フラグ回収早すぎんか!?」

 森の茂みをかき分けて現れたのは、大型のイノシシ型モンスター「ブラッドボア」。


【敵情報】

名前:ブラッドボア

ランク:C相当

特性:突進・毒牙・突風の尾

弱点:背中の毛が逆立ってるとき


アリシア「きゃあああああああ!!こわい!!やっつけなさいあんたたちぃ!!」

植田「戦闘力ゼロが叫ぶだけのポンコツ!」

八木「だから護衛が必要なんだろうけど……影よ形を成し、我が敵を穿て――虚影・穿!」


→影弾、命中!ブラッドボアの足を一瞬止める!

植田「空を裂け、刃となれ――空断・一閃!」

→斬撃が正面をかすめるが、ちょっと浅い!


八木「クッ、やっぱCランクはタフいな!」

アリシア「なにしてんのよおおお!とっとと倒しなさーーい!!」

植田「うっさい黙れ!こっち戦闘中なんだよ!」

八木「うるさすぎて集中できん!」


 そこで、俺は新スキルを使うことにした。


植田「《マジックブースト》発動!……空を裂け、刃となれ――空断・一閃!」


→魔力1.5倍!斬撃が閃光のように飛び、ブラッドボアの目を狙撃!


八木「ナイス!じゃあ俺も……《影縫い》!」


→影が足元に伸び、ブラッドボアの動きを封じる!


植田「とどめいけるか!?」

八木「しねええええ!!」

植田「口悪!」


 全力の《虚影・穿》がモンスターの胸元に突き刺さり――ドカン!!

ブラッドボア「……グルゥ……グァ……」

→ドサッ!撃破!


アリシア「……あら。やるじゃないの、あんたたち」

植田「やるじゃないの、じゃねーよ!今ので死にかけたわ!」

八木「こちとらHPギリだぞ」

アリシア「ふふん、まあ褒めてあげるわ。王族の私が!平民に!」

植田「もう黙って帰れ」


ギルド帰還 & ステータス更新

受付嬢「……お帰り。王女様、無事だったみたいね。てか、よくあの性格でブチ切れなかったねあんたたち」

植田「俺のHP、ツッコミで全部消費したわ」

八木「魔物より精神的ダメージでかいんよ」


📘【植田 凜(うえだ りん)】

Lv:3 → 4

HP:90 → 100

MP:145 → 160

筋力:18 → 20

敏捷:30 → 34

知力:52 → 58

スキル:

・《斬撃魔法:空断》Lv.2

・《学識の瞳》

・《詠唱》

・《マジックブースト》

・《霊視》


📗【八木橋 亜生(やぎはし あおい)】

Lv:3 → 4

HP:130 → 145

MP:110 → 120

筋力:60 → 65

敏捷:38 → 42

知力:23 → 25

スキル:

・《闇魔法:虚影》Lv.2

・《戦術思考》

・《詠唱》

・《影縫い》

・《影結界》


 俺たちは今日も、意味わからん性格の王女を護衛して、経験値だけはたっぷりもらった。


 でも心のHPは赤ゲージだった。


次回予告

「次の依頼はダンジョン探索ですって?ふふ、楽しみね。

 あ、もちろん私も行くから!当然でしょ? 王女ですもの!」


植田「ちょっと待てお前また来んのかーーーー!?」

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異世界へようこそ、死因はトラック(空中) 黒山羊 @yage0308

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