異世界へようこそ、死因はトラック(空中)
黒山羊
第1話異世界へようこそ、死因はトラック(空中)
夕方、帰り道。中学の制服姿で、少し気だるげに並んで歩く男子ふたり。
植田「おい八木、今日の理科の実験、ちゃんと見てたか?」
八木橋「いや? なんか水が沸騰してた気がするけど……」
植田「それ前半の話だろ。俺たち、温度測るとこから寝てたぞ」
八木橋「しかたないだろ。理科室の椅子、座り心地よすぎ」
植田「快適さで睡魔に負けんな!しかもあの椅子座り心地悪いって前言ってたじゃん自分で!」
このふたりは、植田凜(うえだ りん)と八木橋亜生(やぎはし あおい)。
中学1年、13歳。性格は正反対だが、なぜかずっとつるんでる親友コンビだ。
凜は頭が良くてしっかり者。だが少しふざけたがりで、何かと突っ込み役になる。
八木橋はとにかくマイペース。ちょっと面倒くさがりで、常に眠そう。だが、地味に体力はある。
八木橋「……そういやさ、最近異世界転生って流行ってんじゃん?」
植田「うん。だいたいトラックに轢かれて転生するやつな」
八木橋「マジであれ、なんでトラックなんだろな。バイクとか軽トラでもいいだろ」
植田「いや、そこまで真面目に考えることか!?」
くだらないことを言いながら横断歩道を渡ろうとした、その瞬間だった。
八木橋「……おい凜」
植田「ん?」
八木橋「……あれ、空からトラック降ってきてね?」
植田「は!? ちょっ……ってほんとに!? どんなSFだよ!」
彼らの頭上、高さビル10階分くらいの空中に、なぜかド派手なデコトラが浮かんでいた。
しかもものすごい勢いでこちらに落ちてくる!
植田「なにこれ怖い怖い怖い! 避けろって八木!」
八木橋「無理、諦めよう」
植田「諦めんの早くね!?」
\ドォォォン!!!!/
そしてふたりは、落ちてきたトラックに見事に潰されて、あっけなく死亡した——。
天界:ふわふわの雲の間
植田「……ここは……?」
八木橋「うおっ、柔らか。雲?」
植田「ていうか……俺たち死んだ……よな……」
八木橋「トラックに上から轢かれたしな」
植田「いや“上から轢かれた”って表現、字面やばすぎだろ……」
目を開けると、あたりは白く光り輝く空間だった。足元は雲のようにふかふかで、遠くには金色の門のようなものが浮かんでいる。
そして、そこに現れたのは——
???「ようこそ、おふたりとも」
美しい顔立ちの女性。白いドレスをまとい、背中にはふわりと輝く羽。どう見ても人間じゃない。
植田「え、女神様……?」
八木橋「テンプレ来たな」
女神「私はリュミエル。この天界の案内役です。おふたりは……うん、ちょっとしたトラブルで亡くなられました」
植田「トラブルて。上空からのトラック事故って前代未聞だろ!」
八木橋「ちょっとしたトラブルだと?ちょっとしたってなんだよざけんなよ!」
女神「はい、ごめんなさい。トラックの空間転送先が間違ってました」
植田「空間転送するなよトラックを!」
女神は申し訳なさそうに頭を下げた後、パッと手を広げた。
女神「ですので、お詫びとして……あなたたちを異世界に転生させます。特別な力とともに」
八木橋「やっぱテンプレやん」
植田「この流れ、俺もう何回ラノベで読んだかわかんねえ!」
ふたりの前に、光のウィンドウが現れる。
【ステータスウィンドウ】
名前:植田 凜(うえだ りん)
年齢:13歳
種族:人間
職業:剣撃魔導士
HP:70/70(ちょい低い)
MP:120/120(高め)
筋力:15(紙切れ)
敏捷:25(ちょっと遅め)
知力:40(頭いい)
スキル:
・《斬撃魔法:空断》Lv.1
・《学識の瞳》:対象の情報を瞬時に分析
・《詠唱》: 「空を裂け、刃となれ——空断・一閃!」
📗 名前:八木橋 亜生(やぎはし あおい)
年齢:13歳
種族:人間
職業:闇術士
HP:110/110(高め)
MP:90/90(高め)
筋力:50(ゴリラ)
敏捷:35(普通)
知力:20(普通)
スキル:
・《闇魔法:虚影》Lv.1
・《戦術思考》:一時的に戦術計算力アップ
・《詠唱》:
「影よ形を成し、我が敵を穿て——虚影・穿!」
植田「俺筋力紙切れって言われたんだけどひどくね」
八木橋「これ、毎回言わないと魔法出ないの?」
女神「はい、きちんと詠唱しないと発動しません」
植田「本格派すぎる!」
八木橋「俺、これから一生『我が敵を穿て』とか言うのか……」
植田「似合ってるよ、八木」
八木橋「それ褒めてねえよな?」
女神「それでは、おふたりを異世界にお送りします。健闘を祈ります!」
パッと光が弾け、ふたりの体が空間の裂け目に吸い込まれていく。
植田「うおおお、マジで異世界転生するんだ俺たち〜〜!」
八木橋「楽しみ……かも」
異世界:グラーナ草原
ズドン!
二人は空中から地面に落ちる形で、異世界に到着した。
植田「……いてて……お、おおおおお!? 草原! 空青っ! 空気きれっ!」
八木橋「風の匂いが森……って感じする」
植田「ついに来たな俺たちの冒険生活……!」
その瞬間、草の影からぴょこんと何かが跳ねた。
???「ギィィィ!」
植田「……出た! スライム!?」
八木橋「スライムってギィィィィィってなくもんなの?」
八木橋「とりまやらないと」
植田「じゃあいくぞ八木。詠唱だ!」
植田「空を裂け、刃となれ——空断・一閃!」
→透明な斬撃が空中に走り、スライムに命中!
八木橋「……よし、俺も」
八木橋「影よ形を成し、我が敵を穿て——虚影・穿!」
→闇の弾がふわりと飛び、もう一体のスライムを粉砕!
植田「よっしゃ! 初バトル勝利!!」
八木橋「転生してすぐ魔法バトルって、どうなんだこれ」
植田「今後どうなるんだろ」
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