第3話 「弾圧」

僕らは迅速にうごかなければならなかった。

今日のこの混乱を最大限に生かさなくてはならない。


僕らはアジトに戻って白玉緒、朴念仁、陳と合流した。

「ここを離れて上海に落ちるぞ」

「でも学生達を置いてはいけないわ、私達は指導者なのよ」

「そんな余裕は今日までだ。ここからは思想統制という「魔女狩り」が始まる。

僕らは目立ち過ぎた。今の北京はナチの統制下のワルシャワと同じだ。

ユダヤ人である僕らは今は逃げるしかない」

「わかったわ…研究データーと実験機材は党に渡せない車に乗せる」

「よし30分後に出発だ」

僕らは城郭に隠していた車を回収している。

車二台であの寺の廃墟のワープポイントまで行かなくてはいけない。

白玉緒はまだしも朴念仁、陳のゲート通過をどう誤魔化すかの問題もあるが…

今は些末的なことだ。


夜中の道路を飛ばす…まさか双竜の姿であそこまではいけない。


検問はまだ設置されていないが軍関係の車両の近くには恐ろしくて行けない。

騙しだましで北京の郊外に出たのは夜の3時ぐらいになった。

「明日はもっと厳しくなる、今出れたのは僥倖だ…」

以前所長であった気象研究所までの道で朴星凛は呟いた。

「気象研究所を迂回していけないのか…」

僕は尋ねる。

「それは無理だ。山中の一本道それに迂回する時間が惜しい…」


気象研究所の鉄塔が見える。

「妲己の手下が伏兵を置いているのは間違いないな…」

「おそらく…」

「山犬とマンドリルと虎が不確定だがいないから…」

「画皮とその配下の忌太郎、天狗、ミノタウルスは確実、黒麒麟はいるかいないか」

「今度は足手まといがいる…そこでだ…」


気象研究所の敷地に入る。

駐車場を抜けないと荒れ寺の道に行けない。


「暗雲を出す」

空が曇って雨が降り出した。

これで飛蝗の大群の術は使えない。


稲光が駐車場を照らすと「画皮」が宙に浮かんでいた。


「ここから先は通さねえか…」

「いい加減、あいつのアホ面は見飽きた!今回で片を付けるぞ」

「…了解…」

杜星凛は運転手側のドアを開け

掌から電撃を放ち画皮にぶつけた。

一直線の電撃は画皮に直撃し…炎を上げて墜落する。


「この奇襲が効くのは一回だけ…本当は「鴉天狗」に使いたかったが

お前が、のこのこフワフワ浮かんでいるのが悪い…」

まずは一匹。


画皮の墜落後には忌太郎が立っている。

「畜生…奴が本体か…」


突然!!ボンネットに槍が突き刺さった。運転手席を狙って

5センチずれていれば脳天直撃!

鴉天狗?!


前方から黒麒麟が突っ込んでくる。

正面衝突!!

その衝角は正面ガラスを突き破り運転席を穿つ!


車は衝撃で横転する。

しかし麒麟も生きてはいまい。

一人一殺の自爆攻撃!


辛くも杜星凛、杜月凛、王美喉は車中から脱出した。


鴉天狗に向かって杜月凛の火炎放射の範囲攻撃を仕掛けるが…

鴉天狗は団扇を振って突風を起こして無効にする。

「畜生、相性最悪だな…」

これは赤竜に変化しても同じ結果…拳法を使えないだけ不利。


道の脇から黒い巨大なミノタウルスが突進してくる。

「へへっ牛魔王か…俺は斉天大聖…」

闘牛の要領で突進してきた猛牛に布を被せて目隠し、そして如意棒の一撃!

「挨拶代わりの一撃だ!まだまだこんなもんじゃねぇだろう!!」


相対する相手の組み合わせ残るは…

「おまえ…嫌い…」

忌太郎が杜星凛を指さす。

「俺も米や麦を食い荒らすイナゴ使いのお前が大嫌いだ!」

「僕…体内電気使う…お前の電撃…効かない…」

「そりゃどうも」

杜星凛は飛びナイフを投げるが下駄を手に持たれて防がれた。

「その虎縞のチョッキは避雷針みたいだな…」

杜星凛は拳法で忌太郎を倒そうとする。

「北海竜王拳!」

「幽霊族全滅拳!」

お互いの拳を繰り出すが忌太郎は牽制で頭の毛針を飛ばしてくる。

杜星凛は受け一方になる。


その乱戦を突っ切って玉緒の運転する車が駐車場を走破する。

僕はボンネットの上から去り際にムラサメの光弾を連続で発射した。


それは鴉天狗、牛魔王、忌太郎の横を掠めて牽制攻撃になった。

その隙を見逃す三人ではない。


「南海竜王拳!九星滅殺!!」

「北海竜王拳!斗彗眼!!」

「聖天門猴拳!雄牛屠殺!!」


それぞれの必殺拳が炸裂する!


鴉天狗は胴体に九つの穴を穿たれ墜落する。

忌太郎は残りの一つ目に指突が入る。

牛魔王は焼き印押しのように両方の角を持たれて地面に頭を叩きつけられた。


道教の弾圧がおこらなければいいのだが…

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天安門事変 稲富良次 @nakancp

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