第2話 「中南海襲撃」
学生が党本部がある中南海に押し寄せる。
僕らはその中に紛れている。
長安街にある南端「新華門」に到着し
「李鵬出てこい!」などと叫びながら警備の警察隊と激しく衝突した。
そして門が打ち壊され学生が流れこむ。
僕らはこの機を逃さす「怒り狂う群衆」から離れて夜陰に隠れる。
目指すは「中海」と「南海」のはざま
失脚させた趙紫陽に不都合な証拠品を置く策は有効
たとえは「学生を煽動させ自分が首魁になる政府転覆計画の草案」そういう類の文章を机に忍ばせるはずだ。
そこを押さえる。
杜星凛が侵入口にいた。手回しがいい。
「おまえら党の施設にジャミングや鍵解除器具用意しなくてきたの?
中国共産党を舐めてない?
僕と白玉緒が今日やっと完成させたデバイスがなければ入った途端に一網打尽で
鎮圧されるよ」
といって黒いデバイスを見せた。
「アイパット貸せよ」
ぼくがリックサックからアイパッドを取り出す。それと黒いデバイスを接続
させる。
「よし解除成功…ジャミングも長く続かないから手短に頼むぜ」
僕らは室内に入った。
ムラマサをガンモードにしておく。
威力は「スタン」に設定…
王美喉こと孫悟空は「如意棒」を出した。
「お前は…」
「俺は人間火炎放射器、弟はライトニングボルトを無限に発射できる、心配無用」
派手な効果で隠密向きじゃないな。
警備員は「新華門」に向かっているのか思いのほか少ない。
要所要所で不意打ちで遠くから麻痺弾を撃って鎮圧させる。
執務室の前には二匹の虎がいた。
王美喉が反対側に大きく回り込み虎を挑発する。
怒った虎達は美喉を八つ裂きにようと走り出した。
僕らはその隙に執務室のドアを開けた。。
目の前の執務室に山犬とマンドリルがいた。
「おやおや飛んで火にいる夏の虫ですか」
執務室の窓の外に
巨大な緑色の龍が浮かんでいる。
「ここでは手狭だ…湖の上で戦いましょう」
というと窓を開け放ち山犬とマンドリルは龍にまたがった。
「この挑発は傲兄弟としては乗ってしまうよな…」
「そうだな兄者…」
二人は瞬く間に「赤竜」と「黒龍」に変化し窓から外に飛び出した。
竜宮城の傲家のお家芸だ。
僕は山犬とマンドリルが触っていたと思われる執務室の机の扉を開け
そこにあった怪文書を取り出した。
今度は僕らの方が一手上だった。
部屋から出ようとすると…
「それは置いていけ日本人」
ロシア語で呼び止められる。
「ミハイル・ラスプーチン!!」
「鄧小平と我々の筋書きに変更はない」
ラスプーチンは背広を脱ぎネクタイを外した。
「趙紫陽に責任をおっかぶせて革命の鎮圧を行おうとするのか」
「外征をするのに国内の世情が安定しないのは目をつぶって
最前線にいくようなものだ」
「いつぞやの決着をつけるか?!」
「ほほう…俺に対して舐めた口をきけるようになったか…かかてこい!」
僕はラスプーチンに向かってムラマサを投げた。
それは躱され壁に突き刺さる。
これは陽動
ラスプーチンの死角に回り込み「正拳」の連打を当てる。
ラスプーチンは掌底の捌きだけでそれをいなす。
組みつかれたらほぼ負けだ。
僕としてはジャブを当て続けて隙ができるのを待つしかない。
だがラスプーチンもカポエラのような足技を繰り出してくる。
「システマだ…俺が柔道だけだと思ったか…」
ロシアの格闘術か…スナペッツ上がりのラスプーチンが習得していても
おかしくはない。
美喉が部屋に入ってきた。
「おい時間がない…退散するぞ!!」
僕の窮地を見て美喉が加勢に入る。
その隙に僕はムラマサを壁から取り出し刀身を発光させた。
窓を背にして僕はラスプーチンを威嚇する。
流石に発光する剣の間合いにラスプーチンは侵入しない。
美喉が口笛を吹いた。
僕と美喉は赤竜と黒龍にまたがって部屋を出る。
上空に逃れた。
天安門広場の方が燃えている。
人民に対して軍隊が発砲している。
虐殺だ…
人民英雄記念碑の前、毛沢東記念館の間に学生と労働者の死体が多数転がっている…
その地獄絵図に僕らは何もできない。
これは悪名高い弾圧として後世に語り継がれるだろう。
学生、市民、工員のほとんどは武装していなかった。
党本部の過剰反応もいい所だ。
もしかしたら投獄された反乱分子はこれから起こる戦争の最前線に
駆り出されるのかもしれない。
この厳戒令における反乱分子鎮圧は北京だけではなく恐らく
中国全土に広がるだろう。
中国が人道的に革命を起こす機会は…この半世紀、永遠に失われた。
僕らは自分達が燃料を投下したこの革命の失敗を…
上空から眺めるしかなかった…
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