魔女のタマゴ

綾南みか

はじまり


 現代の日本のとある街に、腐女子の魔女が住んでおりました。そう、何百年も生きていると、腐女子になってしまう魔女だっているのです。


「虚構のものはもう飽きた。実物が見た――い!!」


 ある日、魔女はそう叫びました。趣旨がえをしたようです。

 しかし実際には、なかなか魔女のお眼鏡にかなった実物はいなかったのです。


「探すのはめんどくさい。そうだわ。魔女である私が、実際にいる男の子に魔法をかけて、ひとコマのステキなお話を作ってしまおう」


 何やら怪しい事を思いついた彼女は、空飛ぶほうきに乗ってねぐらから飛び出して、魔法の材料を集めに走ります。

 そうして集めた、南極の百万年前の氷、ベラクルスアメジストのクラスター、花開いたばかりのミクランサム等々を魔法の秘薬と一緒に大きな鍋に入れました。

 これを魔法の呪文を唱えながらぐつぐつと煮詰めること一週間。最後に女の子の失恋の涙を一振りエッセンスにして出来上がり。


 出来上がった秘薬を小さなタマゴに詰め込んで、魔女はにっこりといかがわしい笑みを浮かべました。そして、ターゲットを求めて街に飛び出したのです。

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