無限の焼印を持った俺は異世界で最強

菓子月 李由香

親愛なる貴方へ。

異世界はあるのだろうか。

よくラノベやマンガやアニメなどの創作に置いて、多々見かける異世界と言う概念。

その世界は、我々とは全く違う文化形態をとり全く違う文明が発展している。

その最たる例が『魔法』。

少年少女の皆々はそれに憧れている者は少なくないであろう。


△▽


落ちている感覚が体を包む。

朝、いつも通り学校に向かうため、玄関の戸を開けた瞬間の出来事だった。

僕は理解の落ち着かぬそれをどうする事も出来ず。

今暗闇の中を落ちていた。

「力を与えよう」

いきなり、男の声が聞こえる。

(力?)

ただでさえ状況が掴めないんだ、今更超えていどで驚きはしなかった。

「そうだ、力だ」

男は話を続ける。

「其方に一つ、『焼印』と言う力を与えよう。全てを自由にできる力を」

男がそう言った瞬間。

右腕に違和感を覚える。

まるで、違和感に反応したかのように視界が霞む中、男の声はこう言ったのだ。

「ようこそ異世界へ」

と。


△▽


田舎の辺境国家アベル。

その国の保有する領土の中にあった小さな森、シッテムで、少年は目をさました。

少年の名前は葉月ヨウゲツ レイ

あたりは木々で囲まれ、葉の屋根が涼しげな影を作っている。

「はぁ、なんなんだ?」

玲は体を起こし、辺りを見回す。

田舎町に住んでいたとは言え、こんな場所に来る用事も無ければ、見たこともない。

少年は立ち上がろうと、手を地面に付いた時、一冊の本が地面に落ちていたことに気づく。

表紙に何の文字もないその本は、古書の様にボロボロであった。

玲はその本を開いてみる。

びっしりと文字の乗ったそれは、『魔法』がたくさん記されていた。

直感的に何か大切なものと判断した玲は、それを持つために、右腕を伸ばす。

袖口から見える、火傷の跡に玲はまだ気づいて居なかった。


(とりあえず歩くか)

玲はそう思い、立ち上がり日の出ている方に歩き始めた。

シッテムの森は、森にしては小さい。

そのため、直ぐに森から出ることはできた。

森を出てすぐの涼しげで、透明な水がゆっくり流れる小川。

玲はその前に座り込んだ。

運動不足で典型的なヒョロ人間の玲にとって、森は慣れないものだ。

この水は飲める水かと、玲は湖面を覗き込む。

透明で透き通った水に映る自分の顔は、自分の顔ではなかった。

玲は目を大きく開き、自身の視力を疑うが、玲はあいにく両目共に視力1.2の男。

見間違いなんかじゃない。

黒い髪の毛を肩まで伸ばし、まん丸で可愛らしいめ、全体的に顔のパーツが整った美形の顔であった。

「えぇ!!!」

玲は驚く。

そして、一つの大切なことを思い出し、体を起こしズボンの中を覗き込む。

「よかった、相棒はいる。」


玲はどちらかというと、ブスの人間であったはず。

では、なぜこんなに美形の、それも少女の様な見た目になっている?

(もっと、こうダンディーでハードボイルドな感じの顔がよかったな)

心で叫ぶ玲であった。


△▽


そこから更に南東に進むと見えてくるのがアベルの中央都市。

ヘナリゼであった。

古い本を片手に持ち、美しい顔立ちをした少年が街を歩いて居ると言うのは、この街の人たちにとっては変な物であり、嫌でも視線が集まる。

玲は人の視線を感じつつ、街をただただ歩いていた。

知らない文字が書かれた看板が目立つ。

ここは、異世界なのだろうか。

玲はそんな事を考えつつ色んな場所を見てまわった。

それ自体は結構楽しい。

異国の風景は新鮮だからだ。

レンガ作りの家々が並び、中央通りに並んだ屋台は知らない料理が並び、良い匂いが鼻に入る。

それでいて、この日本とは違う異国なのに、聞こえる言語は日本語と言う、変な感じだ。

玲が歩いていると、一つの建物の前についた。

『ギルド』

そう書かれた建物の前に。

大剣を背負った甲冑男や、ローブを纏い杖を持った女性がその施設の中へ向かって入っている。

玲は何の気無しに、その施設の中に足を踏み入れてみた。

天井が高く、火の灯っていないシャンデリアがぶら下がっている、ギルド内の飲食コーナーでは屈強な男たちが昼真っから酒を引っ掛けている。

そして、反対側にあるカウンターでは、少し露出の多い服を着た受付嬢が依頼の対応をしていた。

そんなギルド内では、一人の少年に視線が集まっていた。

その少年こそ、玲であった。

古書を小脇に抱えた女とも見える美少年に。

そんな玲はカウンターに向かう。

「すいません」

「はい、どうされましたか?」

可愛らしい栗色の髪をした女性がそう答える。

「ここってどこですか?」

「アベルと言う国のヘナリゼと言う街の冒険者ギルドですよ?面白い事を聞くお嬢様ですね」

(男なんだけど、、、、ギルドって今言ったか?)

「ここはギルドなんですか?」

「えぇ、表にもそう書かれていますよ?」

「すいません、この国の文字には慣れていなくて」

「そうでしたか。失礼しました」

受付嬢は軽く謝る。

(ギルド、、、ここが、仮に日本で無いとすれば円は使えないわけだ。ギルドなら、仕事がもらえるかもな)

「すいません、仕事もらえるでしょうか」

玲はそう、受付嬢に聞く。

「えぇ、可能ですよ、国際ギルド委員会に登録していますか?」

「いえ、して無いですね」

「でしたら、登録しましょう。」

受付嬢はそう言うと、裏から一つの機会を取り出す。

タブレットに似たその機械には、手を置くための場所があり、そこに手を置くと上部の文字盤にステータスが表示されると言うものだ。

「こちらに手を置いていただけますか?」

受付嬢に言われるがままに手を置く玲。

手を置いた箇所がじんわりと光り、少しして文字盤に文字が映し出される。


==========

【名前】レイ・ヨウゲツ

【性別】男

【職業】なし

【ヘルス】25

【筋力】20

【体力】15

【魔法耐久】1500(限界値)

【魔力】計測不能

==========


表示は玲の知らない言葉のため、何が何だかわからなかったが、その結果をみた受付嬢は目を大きく開き驚く。

「魔力が、、、計測不能???ちょっとお待ちください!」

そう言い、受付嬢は走って奥へ行く。

少しして戻ってきた嬢は何か髭を生やした男を連れてきた。

「レイ様」

「はい」

神妙な面持ちで話し始める男・

「レイ様の魔力は無限と結果が出ました。よって国際ギルド協会において、約10年ぶりのS級冒険者でございます!!!!おめでとうございます!!!!!」

男は大きく手を開き、高らかに宣言した。

その声はギルドの建物内にこだまする。

ギルド協会では約10年ぶりの、アベル支部では初めてのS級冒険者の姿に、全員の視線が集まる。

「素晴らしい!!こちら会員証です!!」

男はそう言い、玲に一枚の名刺サイズの木の板を渡す。

何が何だかわからないが、とりあえず登録できてよかった。

玲は、振り返り、仕事の並ぶ掲示板の前に行こうとする。

いっぽ、踏み出した瞬間。

玲の周りに人がどんどん集まってくる。

「な、何でしょうか」

玲がそう聞くと、周りの者たちは足並み揃え、こう言った。

「うちのパーティーに来てください!」

いきなり、たくさんの屈強な男たちからプロポーズされた玲。

(>>S級冒険者欲しい<<)

これが男たちの総意であった。

それもそのはずで、パーティーのレベルはメンバーのランクの平均。

5人が1でも、一人の100が入れば、それだけで一気に17上のレベルに上がるわけで、さらに魔力が無限の人間。

それすなわち無限の治療要員でもあるのだ。

怪我が付き物の冒険者はそれだけでも嬉しいのだ。

「はぇ?」

いきなりのハーレム(笑)な展開に、混乱する玲。

元々、たくさんの人は苦手な男だ。

そんな人間がこんな状況になったら、どうなると思う?

「す!すいませんでした〜〜〜〜!!!」

玲は男達を払いのけ、出口へ向けて走り出す。

「野郎ども!!!あの小娘を止めろ!!!!」

男の内の一人がパーティーメンバーにそう叫ぶと、筋肉に脳みそを侵されてそうな男どもが玲目掛け飛び掛かる。

「僕は!!!男だ!!!!!!!!」

そう言い、横にスライディングするとこで猛攻をかわす玲。

だが、S級に飢えた獣達は、玲と言うエサをそう易々逃すわけがない。

「お前達!やーーーーておしまい!」

「アロホラサッサ!」

女に言われ、男二人が玲を捉えようと走ってくる。

片方は手に投げ縄を、もう片方の筋肉質な男は手を鳴らし、近づいてくる。

「うわぁァァァ」

悲鳴をあげ、走る玲。

そんな玲の手をいきなり掴む者がいた。

「こっちだよ!」

そう可愛らしい女の子の声が聞こえ、玲はなるがままに連れられ、気づくとギルドを抜け出していた。

「大丈夫、君?」

そう言い、首を傾げる薄い水色髪の少女。

うさぎのぬいぐるみを抱えた彼女は、へばって地べたに座り込む玲と目線を合わせるように中腰になる。

「うん、ありがとう。」

見ると、年齢は13から15くらいの少女、玲と同じくらいだ。

「おい、セシルいきなり走るなよ」

少しして、男の子の声が聞こえる。

少女はセシルと言う名前らしく、セシルは声のする方向を向く。

「ごめんごめん、サーくん」

そうセシルの言う方向には、金髪の美少年が立っていた。

少女が少しゴスロリ気味の服を着ているのに対し、少年は聖騎士のような甲冑に聖剣を背負った如何にも勇者な姿。

「大丈夫かい?君。すまないうちのセシルが迷惑だったかな?僕はサービア剣士さ。こっちの人形を持った少女は、、」

「セシルだよ!よろしくね!」

二人の子供はそう玲に自己紹介をする。

「僕は、玲よろしくです」

玲も玲で自身を紹介し、挨拶する。

「みたところ、君は魔法使いかな?」

サービアはそう、玲に聞いてきた。

(魔法使い?)

玲が『ハテナ?』と言いたそうな顔を浮かべた物だからサービアは少し戸惑い。

「すまない!魔導書を持っているように見えたので、てっきり」

サービアの視線の先には、ずっと玲が抱えていたあの時森で見つけた本があった。

「あー!」

玲は本の中身を思い出し。

「いや、これは森で拾っただけだよ。僕自身は何もできないよ」

そう、返答した。

「そうなの!魔力無限なのに!」

セシルが割り込んでくる。

「魔力も何も、僕にはちょっと分かんなくて」

「記憶喪失?」

「まぁ、そんなところ」

(自分でもイマイチ状況が掴めてないから、そういう事にしておこう)

「それは大変ね、それならどうかな?一緒にパーティー組まない?」

セシルは玲にいきなりそう言ってきた。

「パーティー、先の男の人たちもそんな事言ってましたね」

「ギルドに登録したのって、お金のためでしょう?それなら受けれる仕事も多くなるし、どうかなって」

「うーん」

(年は同年代か、少し下くらいだろうし、悪くは無いのかもな)

「わかった、パーティーになろう!」

玲はそう言い、頷く。

「よかった〜よろしくね!レイちゃん!」



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