第17話 初デートに焼肉はアリかナシか【焼き肉屋】
いわゆる元カレと新カレと一緒にデートするという楽しいのか微妙なのかよくわからない時間はあっという間に過ぎて、私たちは夕飯の場所へ向かっていた。
「焼肉屋かー、せっかくの初回デートで焼肉はないねー」
昼食の予約は津田君、そして夕飯の予約は鏡介の担当だった。また津田君は鏡介に突っかかっている。
「2人きりなら焼肉なんか食わねえよ、今日は3人だからだよ」
確かに、初デートで焼肉ってあんまり聞かないね。焼くの大変でゆっくり喋れないし、匂いもあるし、好き嫌いもあるかもしれないし。
席に通されて、とりあえず私たちは適当に肉と野菜の盛り合わせと飲み物を頼んだ。時刻が少し早いからか、周りにはまだあまりお客さんがいない。
「それに、別に俺は明日美とならどこにだって行けるぞ。それこそ某ファミレスだって昔よく行ったからな」
先にやってきたビールを飲みながら鏡介が話し始める。
「うん、よくお母さんたちと行ったよね。メニューの間違い探しとかやってね」
「そうそう、あれ見つからないんだよな!」
こうして鏡介と話していると、昔のことをどんどん思い出す。鏡介のお母さんと私のお母さんの仲が良くて、よく一緒にいろんなところに出かけていたんだった。公園とか、お互いの家とか、遊園地とか。だから鏡介と一緒にご飯を食べる機会は多かった。
今でもお母さん同士は繋がっていて、定期的に会っているはずだ。だからまだ私と鏡介がそういう関係になりそうって話は、お互い親に内緒にしておこうってことになっている。そういう意味でも、私と鏡介の関係ってかなり綱渡りだ。
「いいよね、そういう関係って」
津田君もちびちびビールを飲みながら話に参加してくる。
「僕さあ、転勤族の家だったからそういう幼馴染みっていないんだよね。羨ましいな」
そう言えば、津田君は前にもそんなこと言ってたかもしれない。だからいろんな人とすぐに仲良くなるのは得意だけど、深く仲良くなるのはあんまり経験がないって言ってたんだ。友達になってもどうせ離ればなれになるって思うと、心の中で線を引いてしまうとか何とか。
だから初めて津田君の部屋に行ったとき、この人の心の線はどうすれば消えるのかなってちょっと思ったんだ。すごく優しいのに、何かを怖がってる。そんな津田君が、私はずっと気になっていたんだ。
「幼馴染みはいいぞ。幼稚園の写真もうちにあるしな」
「明日美ちゃんの幼稚園時代の写真!?」
「すっごく可愛かったぞ。クラスで一番可愛かったと思う」
「畜生、幼馴染みめ……」
ごめん、やっぱり私津田君の心の中が全くわからない。それに今までわかったつもりでいた鏡介の心の中もちょっと見えなくなってきた。なんだろう、私だけ置いていかれているような、そんな感じ。多分、私が中心にいるべきはずなのに。
「ほら、肉来たぞ。焼いてくからな」
こういうとき、面倒見のいい鏡介が率先して仕切る。こういうところは、鏡介のお母さんそっくりだ。
「明日美ちゃん、追加で何か頼む?」
津田君もいつの間にか焼肉に参加している。
「えっと、じゃあタン塩を追加で」
「いいよ、どんどん食べよう!」
こうして私たちは食べて飲んで、何だか楽しい時間を過ごした。少しだけわかったのは、津田君も鏡介も私のために何かしてくれてるってこと。
じゃあ私は、2人のために何かできるのかな?
津田君とは多分今日で会うのが最後だし、鏡介と一緒にいるのは楽しいけどそれ以外に何が出来るのかよくわからない。
「明日美、食べてるか?」
「うん、ありがとう」
さり気ない鏡介の優しさが心に染みる。思えば、昔からこうやって気を遣ってもらっていた気がする。何だろう、男の子っていうよりヤンチャな弟みたいなところもあったけど、今の鏡介はどっちかというと面倒見のいいパパみたいな感じ、っていうのかな……?
そっと津田君の方を見ると、津田君はとても楽しそうだった。もうすぐお別れなのに、もう少し寂しそうな顔をしたっていいじゃない。ちょっとだけ、私はシロクマのゆめちゃんが羨ましくなった。
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