誹謗中傷ワクチン
五月雨 芳一
誹謗中傷ワクチン
私、桜弦音は今、誹謗中傷に悩まされている。
きっかけは友達に仕掛けたイタズラだ。
本当ならすぐにネタバラシをして
すぐに終わらせるつもりだった。
なのに、イタズラの瞬間を見た一人の生徒から
瞬く間に噂が広がり、イタズラという事実は
広がっていくにつれて捻じ曲げられ、
最後にはイジメという事実にすり替わっていた。
その結果、私は犯罪者のような扱いを受け、
近づくだけで煙たがられるようになった。
しかも誹謗中傷はエスカレートしていき、
最終的には、
学校の掲示板や通学路にやってもない罪が
記載された手配書が貼られていた。
そんなある日、有名な製薬会社が
誹謗中傷ワクチンなるものを開発した。
今はこのワクチンを試す被験者のバイトを
探しているらしく、
協力してくれれば大金がもらえるとのことだ。
正直闇バイトのような
怪しさしか感じなかったが、
17歳でもOKという文章を見た時点で
すでにタガは外れていた。
翌日、私は藁にもすがる思いで
被験者に志願をした後に、
校長を言いくるめて見事バイトの許可を得た。
数日後、私は家から最も近い製薬会社に
向かい、ワクチンのメリットデメリットを
聞かずに、誹謗中傷ワクチンを打った。
その夜、私は脳の内側を大きめの針で
刺されるような激痛で一睡も出来ず、
収まった頃には既に朝だった。
効果は本当に出ていた。
廊下を歩いていても、
全く誹謗中傷が気にならなったのだ。
それどころか、全ての事に対して
徐々に無気力になっていた。
しかし気にする事でもない。
だって周りの人間も同じだからだ。
歳を取れば取るほど、夢と現実のギャップに
失望して気力なんてすぐになくなる。
それがこの世界の常識なのだから。
よくは知らないが、
あのあとたくさんの人ががししたらしい。
ああ。きっとワクチンを打ったんだ。
みんなもきっとだれかのことばに
おびえていたんだ。
わくちんのおかげでみんな
かいほうされたんだね。
だってわたしもうったひからなにも
たべてないんだもん。
ああ、ねむいなあ。
ぜんぜん……ねむく……ないのに。
誹謗中傷ワクチン 五月雨 芳一 @2024419
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