3話 元アルバイト先の常連さん

「すみません・・・。ちょっと状況が理解できてないんですけど」


なんか今日情報量多くない?バイト先が突然潰れたり、そのバイト先の常連さんに家政夫になってほしいって言われたり。

まあとりあえずは、この状況を整理するのが最優先なんだけど・・・。


「うふふ。そうねいきなり飛ばしすぎちゃったから少し混乱しっちゃたのね」


「ならひとつずつ整理していきましょうか」


乃華のはなさんは鞄からメモ帳を出すと、何かを書き始める。

よかった・・・。しっかりと説明してくれるんだ。流石は乃華のはなさん。

まあこの状況を作った原因の半分が、乃華のはなさんって言うを除けばだけど。


乃華のはなさんはメモを書き終えたようで、俺にそれを見せながら説明をしてくれる。


「まずしゅんくんがのアルバイト先である『MAKADAマカダ』が、急に閉店することになったから始まるでしょ?」


「はい」

改めて聞くと凄い状況だよな急に閉店するって・・・。


「そこで私が、新しいバイト先として家で家政夫をして欲しいって話したわよね」


「はい」

正直そこが一番理解出来ないんだけどなあ・・・。

まあ今は話を聞くことを優先するとしよう。


しゅんくんも知っていると思うけど、私はいつも21時くらい家に帰ってくるのよね」


「ええ。それは知ってますよ」

乃華のはなさんはいつも部下が全員帰ってから退社しているらしい。

以前、乃華のはなさんからそんな話を聞いたことを覚えている。


しゅんくんもアルバイトをしてたから分かると思うんだけど、帰ったら何もやる気が起きないのよね」


あ~すごい分かる。俺も一人暮らししているから遅くまでバイトがある日は、自炊がめんどくさくてお弁当とか買って帰るし。

俺と違って、朝から働いている乃華のはなさんはもっと疲れているに違いない。


「だから私ね、お手伝いさんを雇おうかなって思ってたの」


まあ最近はそんなサービスもあるらしいからな。食事や洗濯などをしてくれるやつ。


「でもね、知らない人に家の事を任せるのって少し怖いのよね」


「だからしゅんくんにお願いしちゃおうかなって!!」


ごめんなさい。理由は分かりましたが、だからの所を省略しないでください。

普通のお手伝いさんはダメで、どうして俺は大丈夫なんですか?


「ごめんなさい。それで何で俺になるんですか?お仕事をいただくのは非常に有難いんですけど」


「だってしゅんくん料理出来るでしょ?」


「はい。『MAKADAマカダ』での調理は全部僕がやってましたから」

店長料理出来ないんだよな・・・。俺がシフトに入ってない時どうしてたんだろう?


「一人暮らししているから、洗濯や掃除も自分でやってるでしょ?」


「まあそうですね」


「だったら条件は満たしているじゃない!!これで納得してくれたかしら?」


納得はした。でも何で俺になるのかは理解出来ない。

乃華のはなさんの財力だったら、一流のお手伝いさんを雇ることだって出来るはずだ。なのにただの大学生を選ぶ理由が分からない。


「それにしゅんくんのことは信頼しているから」


「どう?『MAKADAマカダ』のお給料の5倍は出すけど?」


「やります!!やらせてください!!」


それは流石にやります。住み込みで家事をするだけでMAKADA《マカダ》の時の5倍だろ?

これほどの優良物件はいくら探しても見つからない。これはやるしかないな。


「それじゃあ決まりね!詳しい話をしたいから、来週の土曜日に私の家に来てくれないかしら?」


そう言うと乃華のはなさんから一枚のメモを渡される。

そこには住所と電話番号が書かれていた。


「家の下についたらこの番号に連絡してね。LIMEだったら気づかないかもしれないから。」


「分かりました。それまでに荷造りはしておいた方がいいですか?」


「そうね・・・。出来るだけ早く来てほしいからそうしてくれると嬉しいわ」


その後軽く雑談をして俺たちは解散をした。

お金に釣られて了承しちゃったけどよかったんだよな?ま、まあ大丈夫か。


**************************************


その日の夜。

俺は樹木斗ききとつばめとグループ通話をしていた。


「それでさ・・ナンパした相手が彼氏持ちでな」


そういえばこいつら今日ナンパしに行ったんだったな。つばめに言われるまですっかり忘れてた。

まあ今日は色々と予想外のことが起きたから仕方ないんだが。


「おい!話聞いてるのかしゅん?」


「あ、ああすまん。少し考え事してた。何の話だっけ?」


「ナンパだよナンパ。どうしたのしゅん?何かあった?」


樹木斗ききとは相変わらず勘がいいな。

まあバイトのはしてもいいか。


「実は今日バイト先が潰れちゃってね」


「おいおい!マジかよ!?」


「アハハ!それは大変だね。何か紹介しようか?」


「いや既に次は決まってるから大丈夫」


流石に元バイト先の常連さんの家で、家政夫をすることになったとは言えないけどな。


「決まるの早えーな。店長からの紹介か?」


「店長からではないけど、まあそんなところかな。後住み込みのバイトだから」


「へ~住み込みのバイト!?珍しいね」


まあそうだよな。乃華のはなさんは当たり前のように言ってたから感覚が麻痺してたけど、これが普通の反応なんだよな。


「まあ信頼出来るところだから大丈夫だよ」


その後色々と質問をされたが、最終的には納得してくれたようだった。

それと関係ないのだが、樹木斗ききとつばめのナンパの成果は相変わらずボロボロだったらしい。

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