Under law ヘヴンズ

@okapen

第1話 不穏な光

2020年季節は春、もう良い時間帯にもなりながら酒場で大量に酒に浸っている男がいた。

そう、それが本作の主人公のジンであった。

彼は古流剣術の達人でありながらも自堕落な生活を続けていて退屈で謙虚な日々を送っていた。


そんな彼のもとに1人の男が現れる。

その高い身長全身を覆い隠せる黒いローブ顔を身に纏い、顔は深く被ったフードで隠れている。

微かに見える顔からは恐らくスラヴ系やゲルマン系の様な彫りの深い外国人風の風貌である事が見て取れる。


彼はジンを見るや否や

「貴方様は古流剣術の達人、現代の侍とまで言われたジン様でありますね?」

と流暢かつ丁寧な日本語で尋ねてきた。

彼は

「私は古流剣術家に興味がありまして。」

「実は私はこの様な物です。」

と言いながら名刺を渡してきた。


名刺には『祝福者』や『真核者』という見慣れない言葉が書かれておりどうやら彼の名前は『カルナク』と言うらしい。

その時は酒に酔っていた事もあるがカルナクと名乗る男からは悪い印象はなく特にその後は何事もなくお互い帰路へついた。


だが後日ジンはどうしても名刺に書いてあった『祝福者』、『真核者』という言葉について聞きたく、

名刺に載っていた電話番号から予定を聞きスケジュールを組み、また会うこととなった。

次の日ジンは

「ではまた17時程にあの酒場の隣の路地で会いましょう。」

と言われ約束の場所でひたすら待っていた。

だがもう18時を迎えようとしていたが一向にカルナクの姿は見当たらない。

諦めて帰ろうとすると路地裏からチンピラ二人に絡まれた。 

ジンは古流剣術家、その為常に腰に小刀を隠し持っているのだが今回はそれを使う必要は無かった。


何故なら丁度その時カルナクがその場に現れ、そのチンピラ共に向かって手の平から眩い太陽の光の様な一閃の閃光を放ったかと思うとそのチンピラ達は塵と化し消えていた。

ジンは当然腰を抜かすがカルナクはお構い無しに意気揚々と語り始めた。

「これが真核者ッ!これが祝福者ッ!!そうなのです!世界へと改革を成すに相応しき肉体と能力を有した試練を合格した者達、それが真核者なのです!」


何を言っているのか分からなかったが明らかに危険かつ異常、

その場から走って逃げるが光の様な速度ですぐ追いつかれそのまま瞬間移動するかの様に別の建物へと連れて行かれた。

そこは廃墟と化した建物だった。

その場には生活の跡がありカルナク以外にもいるようだった。

そんな予感が的中するかの様に1人の男の声が聞こえる。

「おっ!カルナク、そいつが昨日言ってた刀マンか!!あんなに楽しそうに話すくらいだもんな!でもそいつ刀持ってねえぞ??」

振り返ると二人の人物がいた。

『ムキムキタンクトップの坊主頭の男』と

『派手な格好をしたティーンエイジャーの女』だった。

男はこの場に合わないふざけた面白おかしいトーンで話すが男の隣にいた少女はツッコむかの様に

「あんたバカ?常に刀持ってるような人間をカルナクが連れて来ると思うかハゲ、だからお前の長所は筋肉だけなんだよ!」

と毒を吐くと男は「なんだと!?おめえこそ『真核者』になる前はただの小娘だったろ!てか俺はハゲじゃねえ!坊主だッ!」

こんなふざけた会話内容でも1つ1つの単語を組み合わせていけば自分の脳内で己の運命を補完していける物だった。


そして次にジンへと放たれた言葉は案の定予想の範疇だった。

「改めまして、私は浄光の祝福者 カルナクと申します。

以後お見知り置きを。」

続けてカルナクは

「これも巡り巡って結果的に貴方のためになります。

私には貴方の力が絶対に必要なのです、

そして彼らも私の協力者です。

私には貴方の中に強い“武士“としての“核“を感じたのです。

“核“の保有者として“真核保有“の試練は恐らく合格されるでしょう、

ですが問題は真核へと達する際の症状でしょうね。

この症状は人によりかなり違うのですが全員に共通する点としては肉体の変化の際に起こる生きるか死ぬかの激痛と肉体へのショック現象です。

核を待っている者とは言えこれらで約8割命を落としてしまわれるのです。」


と言うと『ムキムキの男』は

「そうだぞ〜、あん時はマジで死ぬかと思ったぜ。全身が一度真核者の肉体に進化するってんの?もういてぇのなんの」

と言うと

『派手な格好の少女』は

「まぁ、痛みなんてすぐ過去の物になるわよ、生きていればね。」とスマホを弄りながら冷たく言い放った。


そしてカルナクは

「準備はよろしいでしょうか?ジン様」

と途端に体が見えない何かで拘束されてそのまま“試練“とやらを開始した。


「俺は真核者になどなりたくもない、そして世界への革命も全て興味ない……早くこの恐怖から解放されたかった」

そんな思いも彼らには微塵も関係なかった。


試練開始と同時にカルナクは“眩い光の籠もった手“でジンの心臓部を触れた後、すぐに俺から離れた。

初めは無の境地とも言えるようななんとも心地よい感覚だったが次の瞬間全身が高圧電流で焼かれるような感覚と体が爆散する痛み、そして体を作り替えられる肉体へのショックですぐ意識が飛ぶがあまりの痛みに気絶する間もないくらいの早さで目が覚めた。


『派手な格好の女』は

「うげぇ……うちのときあんなにヤバかったっけ?今回の侍結構エグい系の人…?」

と言うと

『カルナク』は

「ええ、彼は古流剣術の達人なのです、真核者として与えられる能力と彼の“核“との相性がよければそれはもう彼は最強の侍となることでしょう。」


という言葉を聞き抵抗するかの様に

「俺は侍じゃねえよアホ」

と頭の中で反論したのを最後に意識が深淵へ沈む。


そして次に目が覚めた時には“試練“とやらを行ったアジトと変わっていない様だったが何故か異常に頭もスッキリしていてなにやら体が異常に軽い。


どうやらカルナクはあれからずっと俺の様子を見ていたらしく、

目が覚めた俺にカルナクは手を差し伸べてきたが至って無事で健康の自分は自身の力で立ち上がり近くにある割れた鏡を見てみた。


服や目はもちろん元々茶髪だった髪ですら赤黒く変色しており所々紅い電気を帯びていた。


『ムキムキの男』は

「うぉっふぉー!!!カッケェ!!マジで羨ましいぜ!!なぁなぁなぁ刀マン!刀構えてみてくれよ!いいだろ!?なぁ!」とハイテンションな様子。


『派手な格好の女』は

「この侍さんどんな核してんのよ、ビリビリと伝わってくる覇気だけでもうウチとハゲよりも確実に強いって分かるんですけど……。そんでもってアンタははしゃぎすぎ!」

と焦りと少しの嬉の感情を抱いている様だった。

続けざまにカルナクは

「ようこそ、我々“アンダーヘヴン“のアジトへ、これからは共に世界を相手する同志です。

“紅雷のジン“」

と告げた。


そして考えもクリアになっていた。まるで最初っから『真核者としてついに世界をひっくり返すことが楽しみになっていたような“高揚感と共に“』

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