第11話 鴉

鴉の面を付けた謎の人物と寺蔵の斬り合いが静かに始まる。鬼の頭は腕組み、ただそれを見守っていた。一時は優勢に見えた寺蔵だったが、鴉面の一瞬の隙を突かれ、利き手に怪我を負ってしまう。鴉面の方がスピードで勝っていた。寺蔵は利き手でない左手で長刀を扱わざるを得なくなり、苦戦を強いられる。

やがて、辺りに夜の帳が下りる頃、鴉面の仲間らしき仮面をつけた人物たちが十人ほど集まってくる。しかし、それでも鬼の頭は手を出さず、目を閉じ、腕組みをして瞑想を続けていた。


鴉面揺れ

夜溶けゆく 

黒き瞳 

静寂のなか

闇が満ちゆく


闇が支配する霊山。


寺蔵と鴉面の斬り合いは苛烈を極めていた。利き手を負傷した寺蔵は、左手での長刀の扱いに苦慮し、その動きは次第に鈍っていく。対する鴉面は、夜の闇に溶け込むような素早さで寺蔵を翻弄し、隙あらばその身に刃を浴びせようと迫る。寺蔵の額には脂汗がにじみ、荒い息遣いが森の静寂に響く。

その頃、周囲には仮面をつけた少年たちが十数人、音もなく集まっていた。彼らは戦いの様子を静かに見守り、寺蔵に無言の圧力をかける。しかし、鬼の頭は微動だにせず、瞑想を続けていた。彼の存在だけが、この場の均衡をかろうじて保っているかのようだった。

鴉面は、寺蔵の体力が尽きていくのを見透かすかのように、さらに攻撃を激化させる。一撃一撃が重く、寺蔵の防具に激しい火花を散らした。寺蔵の足元がおぼつかなくなり、体勢を崩したその瞬間、鴉面の刀が寺蔵の脇腹を深く切り裂いた。鮮血が闇夜に飛び散り、寺蔵は膝から崩れ落ちる。意識が朦朧とする中、彼は遠くで瞑想を続ける鬼の頭の姿を捉えた。


闇の中

月が隠れて

見えぬ道

底なしの闇

ただ広がる



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