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 高校の卒業式の時、私は立石さんを呼び止めて、お付き合いの話を はっきりとお断りするつもりだったんだけど、ゆっくりと話をする間も無く。逆に、越前の水仙がきれいから、観に行こうよと誘われて・・・私 試験とかでバタバタするからと断っていると、じゃぁ 終業式が終わったら、直ぐに行こうと、一方的に押し切られていた。こういう時、私 はっきり言えない無いのだ。


 そして、立石さんが家まで迎えにくるってなった時も、菜美からは バカ アホ 男を惑わす悪女とボロカスに言われていたのだ。


 8号線から逸れて海沿いの道を進んで、丘陵地に咲く水仙畑に 少し盛りは終わっていたが、それでも 段々の丘陵地に溢れるようだった。その後、カニを食べようと誘ってくれて、海沿いの漁協がやっているというお店に、平日で2時も過ぎていたので、すんなりと席に座れたのだ。もう そろそろカニのシーズンも終わりなんだろうけど、焼きガニと刺身のセットを立石さんは注文していた。値段も張るのだけで、彼は当たり前のような素振りで「もう カニも 今年の食べ納めかなー」とつぶやいていたのだ。


「あのねー 私 前も言ったと思うけど 高校卒業したら 美容師さん目指して、菜美とお店開くのが夢なの だからね しばらくは結婚も考えて無いのよね」


「うん 聞いたよ だから、俺は まなっぺがその気になるまで待つよ それに、そのお店 スポンサーになるよ 好きなとこにお店選んでよー べっこに立てるのも良し」


「あのさー だからぁ 将来の 旦那様に立石さんとは考えて無いの!」私は、少し イラッときて、強い調子で・・・(わかれよー この 鈍感)と・・・


「いいんだ いいんだ そのうち 俺になびかせるからー マナッペの夢が美容院だったら 俺の夢はマナッペを嫁さんにすることだから」


 なにを言っても通用しないと感じた。


「私ね 今 好きな人 居るんです お客さんで知り合って・・・大学生なんですけど・・・離れたとこだけど・・」


「あっ そう 大学生・・・」


「今 4年生で就活中」


「まだ 社会人じゃぁないんだろう 就活・・・将来 決まってないやんかー 離れてる? ・・・先行き どうなるかわからへんやんかー」


「でも・・・」


「だから 待ってるってゆうてるヤン まなっぺがその気になるまでー 俺の夢」


 もう何を言っても無駄だった。こいつぅ・・・でも 少し 嬉しい気持ちもあったのだ そこまで 私のことを・・・


「ねぇ 篠原さざゑさんのことは 本当にいいの?」


「うん まだ 疑ってるんかー あいつには 卒業式の時 お前は嫁にはせんからなって はっきり 言っておいた でも 心なしか 涙声で お妾さんでも良いよって 古臭いこと言いやがってなー 冗談だろうけど・・・」


「なんか それって 怖い話よねー・・・ 大丈夫かなー」


「大丈夫って まなっぺ その気になってるんかぁー?」


「ちゃうよー 立石さんのお嫁さんになる人のこと 心配してるの」


「その人って 眼の前の君のことだよ」


「もぉー しつこい!」と、私はおしぼりを投げつけていた。

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