1-5

 お盆が近づいた時、すず美から連絡が来て、15日 草津でライブハウスに出るから、観に来てというものなのだ。私 彼らの泊りの予約が入っていることをわかっているので、返事を渋っていたのけど、強引に押し切られていたのだ。 

 

 当日 会場には野原美馬さんも居て、一緒に演奏を聴いて、鈴美のファンらしき人達も何人か居るようなのだ。もう アイドルっぽくなっていた。私 お昼過ぎには帰らないと、夕食の準備に間に合わないのだけど、会場を出ると彼も付いてきて


「ねぇ お茶でもしようよ!」


「えーとー 電車の時間あるからねー 15分程度ならー」


「わかった でも 敦賀まで一緒に帰るよ」と、ず~っと塩津で乗り換えて敦賀まで一緒だった。


「ねぇ 真なっぺは付き合ってる人 居るん?」


「うぅーっとぉー 居らん ふらふらしてるからなー


「じぁさー 俺と付き合ってよー」


「あぁー ミマさんは いい感じなんよ でも 受験やろぅ? 優先して! それからね!」私は あの人のこと ガクさんのことが頭をよぎっていたのだ。


 3時過ぎに家に着いて、今日は家族連れも多くて、部屋は満室で30人分位の用意になるから近所のおばちゃんも2人入ってもらっていたのだ。


 夕方近くなって、徐々に家族連れが浜から帰ってきていて、最後のほうに彼等が戻ってきた。順次、お風呂に入っていたのだけど、彼等は表で水のシャワーだけを浴びて、お風呂から出た幼い女の子とシャボン玉の相手をして遊んでいたのだ。


 彼等の夕食は菜美が配膳していて、何だかんだと話かけられるのを適当に交わしてしたのだけど、ゲンさんに対しては、まともに応対していたみたい。そして、皆さんに配膳を終えた後、菜美は


「私な! ゲンさんに手紙出したんよっ 返事無いんやけどー」


「えっ なんて?」


「あの人 彼女居てへんって言っていたからー 付き合ってほしいって」


「えぇー 住所 聞いたん?」


「あぁ 宿帳に書いてあった」


「ふ~ん でも あれは・・・確か 国松岳さんのんちゃうんかなー」


「国松さんって? ゲンさんちゃうのぉ?」


「へっ そんなとこ 菜美って アホやねー なんでゲンさんになるん?」


「てっきり・・・どーしょー そらぁ 返事無いわなー ぁ ガクさんに届いたんやろーか・・・」


「知らんわー そんなん バカ」


 彼等は食事の時は飲まないのに、終えた後、表の床几で夕涼みをしながらビールを飲むのがいいらしい。注文されたビールを持って、私が運んだのだが、おつまみ代わりに特別にジャガリッコも持って行って、私もしばらく相手をしていたんだけど、菜美もそのうちやって来て、一緒に話し込んでいた。だけど、菜美はゲンさんと二人っきりになりたいと、いじいじしているのがわかって居た。それは、私も同じ・・・ガクさんと・・・。だから、私 ガクさんに向かって


「シロスケってね 夜 散歩から帰ってくるの 12時過ぎなの だから、私 その頃 起きて来て 家に入れてあげるのよ」と、わかってくれるだろうか 私からのサインを送ったつもりだったのだけど・・・


 そして、菜美ったら、強引にゲンさんを誘って


「ねぇ 潮屋さんに このお皿返しに行くの 一緒に行ってぇー」と、引っ張り出していたのだ。30分程で、二人揃って、笑いながら帰ってきたのだけど。


 そして、寝る前に菜美にそのことを聞いたのだけど・・・


「やっぱり 手紙のことは 彼は知らんみたいなのよ それでね 彼にね 彼女居て無いんでしたら、付き合ってくださいって 告ったの でもね 付き合っている彼女は居ないみたいなんだけど・・・はっきり 返事くれないのよー はぐらかすように・・・それだけ! 見込み無いってことよね?」


「ウ~ン どうなんだろう・・・断られたわけでも無いんだよねー」


「まぁ そーなんやけど・・・せっかく 覚悟して、告ったのに・・・もう 冷めてきたわ」 菜美は昔から、身替わりが早いのだ。


 私 12時過ぎを見計らって、寝床を抜け出して、夏みかんの樹の下を覗いてみた。居た! なんとなく寝そべるでもなく ぼぉーっとしているみたい。


「そんなとこで 蚊に刺されますよー」 良かった この人に私の気持ち通じていたんだ。


「うん さっき 蚊取り線香を手に入れてきたからー でも シロスケの姿は見えないよ」


「そーですねー ねぇ 浜の方に行ってみません?」


 浜に出て行って、私は 岸を上げてある小さな船影の砂浜に座り込んだのだ。ここなら、あんまり人目につかないだろうなって思っていた。そして、それとなく彼の手に触れるようにしていって


「前は夜光虫もいっぱい居たのよ」


「そーなんだ 海が汚れたのか きれいになったのか どっちなんだろうね」


「ねぇ ガクさんって 付き合っている女の子 居るの?」


「はっ まぁ ちゃんとってのは居ないなぁー あんまり 知り合う機会もないからー まなみちゃんは?」


「私? 私は居ません」


「そう 美人で気立ても良いのになあー」


「私 いつも グズグスしてるから 菜美ちゃんとは違ってね あの子はハッキリしているし、スタイルも良いのよー 私と違ってぇーえ だから、比べられて・・・あの子はもてるのよー」


「そーなんかなぁー どっちもそれぞれで良いと思うんだけどなぁー 美人姉妹」


「ガクさんって 優しいー ねぇ 私じゃあ だめですか? 彼女」


「えっ あー ・・・君みたいに可愛くて優しい子 願ってもないけど・・・付き合うったって 離れているし・・・それに スギが真美ちゃんのこと好きなんだってー・・・実は 今回 告るって言ってるんだ」 


「えぇー そんなの 私 困ります」


「困られてもなー・・・スギも昔からの親友だし・・・俺も 裏切るようなこと出来ないし・・・」


「あのね 菜美から 変な手紙届かなかった?」


「ああ 来てた でも 多分 ゲンと勘違いしてるんだろうなって ほったらかしにしてる ゲンにも伝えて無いよ! 会った時に直接 言えばいいじゃん まぁ ゲンはスマートな奴だから・・・もてるよ たぶん」


「ゲンさんは 彼女居るん?」


「さぁー 小学校出てから、学校 別だし 普段会わないから知らないんだ でも、家がね 割と格式のあるとこでね 付き合う女の子なんかのこと うるさいんちゃうかなー 誰でもって訳にいかないって言っているのを聞いたことがある」


 そんな話ばっかーで、私はもやもやしたまま帰ってきたのだ。私は もっと 甘い雰囲気で、キスぐらいならって思ってたのに・・・。

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