イオリ。ファミリーネームはない。
そう自らを称する主人公。
本作は彼の生涯を描く。
天涯孤独。育てられた鍛冶屋に虐げられた幼少期のイオリ。
唯一の心の拠り所であった友人らともども、多くの人を地震によって殺めたのは〝カミ〟そう呼ばれた人の域を越える存在だった。
わずか七歳のイオリは、仇と定めたカミを殺すために歩みだす。
手にするは一振りの奇しき剣。赤鞘の不知火丸。
剣に選ばれ、導かれたイオリは超越する存在たるカミを弑する必死の道を辿り行く。
この物語は、どれほど紡がれようとも行き着く先は畢竟、二つしかない。
イオリはカミを殺すのか。殺されるのか。
ただのこれだけである。
刃のごとく研がれた鋭利な物語。
それが〝アガルタのイオリ〟だ。
この話、この行く末。
誰が見とどけずにいられようか?
その日、世界に神が顕現した。
文明はわずか一か月で崩壊したが、人類は絶滅せず、アガルタの女神の救いによって少しずつ復興した。
そして物語は、孤独な鍛冶屋の少年・イオリへと繋がる。
痛みを教えとされ、幼くして過酷な労働と暴力に晒されながらも、彼はただ鉄を打ち続ける。
「おれはなんのために生まれてきた?」
突然、頭の中に大人の女性の声が響く。
「イオリ、あなたはなんのために生まれてきたのですか?」
鉄から飛び散る火花に腕の肉を焼かれながら、イオリは心の中で叫んだ。
「おれの尊厳を踏みにじり、おれの夢を奪うやつと、戦うためだ!」
このとき、イオリの全身から炎が立ち昇り、彼の心に一本、筋金が入った。
まるで絶対錆びない刀・不知火丸のように――。
神の災厄に滅ぼされた世界で、自由と尊厳を取り戻す、復讐冒険奇譚。
ここに始まる!!