第二話 「私って、優斗君のことが……」
「どうしたんだよ?
背後から聞こえる男子生徒の声で私はゆっくりと振り向く。目の前には、心配そうに私を見つめる潤一の姿があった。
彼の心配を取り除こうと私は、笑顔を作る。
だが、その笑顔がより潤一に心配を加えてしまった。
「なにかあったのか? そんなひきつったような笑顔、初めて見たぞ」
私は潤一と交わした視線を下に逸らし、自身が着用する上履きを見つめる。
上履きにはこの時の私の表情がどのようにうつっているのだろう。
心で自身にこう問いかけると、男子生徒の声が聞こえてきた。
声の主は――。
「おはよう。潤一」
顔を上げ、左に向けた視線の先には、あの男子生徒の姿があった。
彼の姿が目に飛び込んだ瞬間、私の鼓動の高鳴りが増す。
「おはよう。優斗」
そう、大島優斗君だ。
潤一は一瞬だけ私に眼差しを向けると、優斗君の元に歩み寄り、談笑を始める。
優斗君は笑顔を浮かべ、潤一との談笑を楽しんでいる。
可愛らしい顔立ちの眼差しは潤一からうつることはなかった。
それは当然かもしれないが、どこか寂しさに近いものがあった。
この感情はなんと名付ければよいのだろう。
再び心で自身の問いかけた私は二人の談笑の声を耳に挟みながら教室に右足を踏み入れた。
昼休み。
昼食を済ませた私は弁当箱をバッグにしまうと視線を廊下に向ける。
廊下の窓際では潤一と優斗君が談笑を楽しんでいた。
なにを話しているのだろう……と私は心で呟く。
すると、私の心の声が届いたかのように潤一がこちらに視線を向ける。朝のような心配の眼差しではない。
普段通りの潤一の眼差しだった。
私は潤一と視線を交わすと、彼に手を振る。
私は潤一に特別な感情を抱いていない。
仲の良い異性の友人としての仕草だ。
潤一はこたえるように手を振り返すと、視線を優斗君に戻し、談笑を続ける。
優斗君は視線をうつすことなく、正面に立つ潤一の言葉に笑顔で頷く。
やがて、二人がやさしい笑いを発すると、昼食をともにしていた
「どうしたの? 廊下眺めて」
私は千尋の言葉ではっとしたように視線を正面に戻す。
私の目にうつるのは、微笑みかけるような千尋のやさしげな表情だった。
「誰かを見ていたの?」
千尋の問いに、私は微かな笑みを浮かべる。
「なんでもないよ」
私がやさしい声でこたえると、千尋は表情を崩すことなく小さく頷き、可愛らしいデザインの弁当箱をバッグにしまった。
放課後。
私は帰宅の準備を済ませると、左手にバッグを提げ、正面の黒板を何気なく眺める。やがて、私の視線は無意識のうちに廊下に向いていた。
視線の先にうつるのは窓越しに見える青空のみで、人の姿はない。
青空をうつす窓を見つめ、私は無意識のうちにため息をついていた。
私のため息からほとんど間を置くことなく、潤一が尋ねる。
「やっぱり、なにかあったろ?」
私は教科書をバッグにしまう潤一の横顔を見つめ、問いに対する答えをまとめようとする。
だが、まったくといっていいほどまとまらない。
「麗奈?」
潤一の心配の窺える声で私は一瞬だけ自身が着用する上履きに視線を向けた後、笑顔を見せる。
「なんでもないよ! ごめんね、心配かけて。じゃ、また明日!」
私は潤一に右手を振る。
そして、背後から聞こえる潤一の「また明日」という言葉に改めて彼に右手を振り、教室を後にした。
歩みを進め、階段の手前に達したところで一度立ち止まると、私は自身に尋ねる。
「私って、優斗君のことが好きなのかな……」
私の全身が
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