雑書き

雨森由希

短編 1 傷

 一番優しい傷跡はリストカットだと思う。なにか、みんなに責められてるような気がして、怖くて、ただ逃げたくて、目を塞いで体を丸めて心のひび割れを感じる。少しの失敗でも、どこか遠くから私は全てにおいて不必要な存在だと、だれかが叫ぶ声が聞こえる。

 手首に引く赤いラインは一種の贖宥状のようなものであり、私の、君の、救いになるかもしれはいもの。わかってる。もちろん、そんなのは過ちだって。遠い昔にも、贖宥状なんてものは正しさの前には認められなかった。けど、もし、それが、あっていいものなら。私の救いになるなら。それは間違っていても、それでも、私の、私だけの救いであり続けるんじゃないか。そう思うんだ。


  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る