気まずい空間

 なぜか想太郎が少し左を向いている。何かあるのか。僕も同じ方向に向いてみる。少し顔を右に回転させた。っ!?

「え……?」

 間抜けな声を出してしまった。

「やぁ、少し驚かせてしまったかな?そういうつもりはなかったんだけどね。」

 啓介が言った。

 同い年なはずなのに高校2年生の平均身長ほどあり、ガタイが良い。何かスポーツやってたっけ?

 ていうかいつから居たんだ?

「ついさっき来たばかりだよ。」

 そう啓介が続けた。エスパーか。

「おい、有起。この人がその人なのか。」

 想太郎が顔を近づけ、ささやき声で聞いてきた。

 頷く。

「えぇと、初めまして。想太郎です。」

「うん、初めまして。啓介だ。」

 そう言い、僕の隣に座った。

「久しぶり、啓介。」

「一年ぶりだね。」

「ああ、そうだね。まあ、この時期しか会わないもんな。」

「遠いもんな。ここまで。」

「そうなんだよ。一時間ぐらいで行けたらいいんだけど。」

「だな。」

 啓介はそう言いメニューを見た。だが運が悪いことに店員が来てしまった。

 「ご注文はお決まりでしょうか?」

 僕のことを対応してくれた店員が言った。

 「じゃあ、オリジナルブレンドを一杯お願いします。」

 僕が答えた。

 「俺もそれでお願いします。」

 想太郎が食い気味に答えた。

 「……じゃあ僕もそれで。」

 一伯置いて答えた。なにか難しい顔をしている。

「オリジナルブレンド珈琲を三杯ですね。少々お待ちください。」

 そう言い残し厨房らしき場所へ戻っていった。

 そして周辺を静寂が支配した。き、気まずい!!

「そういえばさ、有起。どうなんだ?」

 啓介が気まずい雰囲気を悟って話しかけてくれた。ありがたいけどよく分からない質問だ。

「どうって、何がかな?」

「あれだあれ、俺たち受験生だろう。勉強の方とか……」

 勉強ね。まあ、ぼちぼちと言ったところだろうか。

「まあ、ほどほどにやっているよ。」

「そうか……」

 また気まずい空気になってしまった。まぁ、そういうこともあるだろう。

 僕たちの静寂を察してくれたのかかなりタイミング良くコーヒーが来た。かなり手際が言い。そこそこの年数働いているんだろう。そして「ごゆっくり」とだけ言い伝票を置いて行って戻っていった。とりあえず一口。

「これ、美味しいね。」

 いや本当に。コーヒーは滅多に飲まないけれどこれはきっと絶品なんだろう。




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