第5話

北方の氷雪地帯で、氷竜シルフィエと契約を結んだノア=アルディス。神話級魔獣フェンリルとシルフィエという二大精鋭を従え、彼の名は日増しに高まっていった。


しかし、そんな成長の裏には、王都の深い闇が静かに牙を剥こうとしていた。



王都の召喚状


ノアが故郷の村へ一時帰還しているとき、王都の使者が突然現れた。黒革の封蝋が押された召喚状を手に、冷たい視線を向ける使者の姿に、村人たちもざわついた。


「ノア・アルディス様にお伝えいたします。王国騎士団より、至急召喚の令が届いております。直ちに王都へ参じられるよう、お願い申し上げます」


ノアは目を細めてそれを受け取った。


「何の用だろう……?」


手紙の中身には、こう記されていた。


「近頃、王都にて魔獣の暴走事故が相次いでいる。貴君の神話級魔獣を従える力を貸してほしい。事情聴取も兼ねて、速やかに出頭されたい」


ノアは顔をしかめた。魔獣の暴走など、ここ最近耳にしていない話だ。


「これは……何か裏がある気がする」


フェンリルが唸る。


「王都騎士団は、お前の成り上がりを快く思っていない。最弱職と嘲笑されてきた者が神話級魔獣を従えるとなれば、面白くない連中も多いだろう」


「……僕は行く。真実を知りたい」


シルフィエも頷いた。


「共に行こう。私も、王都の秘密を知るために」



王都の陰謀


王都は、想像以上に巨大で複雑な街だった。魔獣調査の名目で騎士団の施設に入ったノアは、そこで不穏な気配を感じ取った。


数人の騎士が密談をしているのを聞いてしまったのだ。


「神話級魔獣の力を国が独占できれば、軍事的優位は揺るがないな」


「だが、奴(ノア)を排除しなければならん。裏切り者の異端者に神話級魔獣を与えるわけにはいかん」


「黒牙商会の残党とも繋がっているらしい。完全に根絶しないと……」


ノアは深く息を吐いた。自分はすでに“異端”扱いされているらしい。


「僕の仲間を狙うつもりだ……絶対に許さない」



新たな盟友


そんな混乱の中、ノアはある男と出会う。


名をカイル・リーヴスと言い、王都騎士団の中でも異端視される斥候隊の隊長だ。鋭い目と冷静な態度は一見冷徹だが、ノアの話を聞くうちに共感を示した。


「お前のやり方は正しい。魔獣は道具じゃない。だが、王都の権力者たちは古い価値観に縛られている」


「力を合わせれば、この腐った体制を変えられるかもしれない」


カイルはノアに、密かに協力を申し出た。


「俺は裏から情報を掴んでいる。黒牙商会の残党と王都権力者の癒着、その証拠も掴んでいる」


「よし……これからは共に戦おう」



裏切りの夜


その夜、ノアの宿に黒い影が忍び寄った。


「奴を抹殺せよ」


謎の声が囁く。襲撃者が窓を破り、魔獣を引き連れて襲いかかる。


だが、ノアの神話級魔獣二体は一瞬で反応し、襲撃者を蹴散らした。


「やっぱり、油断はできない」


フェンリルが低く唸る。


「しかし、これ以上我々の存在を隠せると思うな」


シルフィエが翼を広げて夜空に舞い上がる。


「ノア、行こう。戦いはこれからだ」


ノアは拳を握りしめた。


「うん。僕たちは最弱じゃない。――これから最強になるんだ」



新たな戦いの幕開け


こうしてノアの前には、王都の陰謀、黒牙商会の残党、そして未知なる魔獣の脅威が次々と襲いかかってくることになる。


しかし、彼は仲間たちと共に、一歩一歩成り上がりの階段を駆け上っていくのだった。

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