企業城下町を支えてきた製鉄所の閉鎖をきっかけに、会社売却で大金を得た三人の金融マンが、サッカークラブの設立と地域再生に乗り出す物語です。主人公たちが選手や監督ではなく、投資と企業再生の専門家という設定が面白く、「どうすれば強いチームを作れるか」だけでなく、「どうすればクラブを事業として成立させ、街全体を立て直せるか」が丁寧に描かれています。
リーグ昇格、スタジアム整備、資金調達、行政や地元企業との調整など、扱うテーマは本格的ですが、三人の金融マンによる軽妙な掛け合いのおかげで、堅苦しさはありません。クラブに関わる人々が少しずつ増え、一つの計画が街全体を巻き込む大事業へ育っていく過程には、箱庭ゲームを眺めるような楽しさと、仕事ものならではの高揚感があります。サッカーそのものはもちろん、クラブ経営や地方創生を題材にした物語が好きな人にもおすすめしたい作品です。
和歌山県木国市に本拠地を構える「ヤマト製鉄」が経営破綻した。従業員の大量解雇や工場の売却により、不安を募らせる地元民の前に現れたのは、サッカーを軸とした都市再生を掲げる三人の投資家たちだった。果たして彼らは新しい時代をもたらす“黒船”となり得るのか――。
サッカーを取り巻く人々をビジネスの視点から描いた群像劇が熱いです!
Jリーグのクラブが存在しない「Jなし県」に、初のプロサッカーチームを作ろう――。投資家リーダー・糸瀬貴矢の呼びかけのもと、市役所、工務店、メディア、デザイン事務所、農家、そして地元の子どもたち、さまざまな中小企業や市民が少しずつ集い、力を合わせてチームを作り上げていく過程が盛り上がります。
地元特産の梅干しにちなみ、チーム名は「南紀ウメスタ」。その選手の多くは地元出身の若者たち。一度はサッカー選手の夢を諦めた者も、再び巡ってきたチャンスに応えるべく、家族の声援を背にフィールドを駆ける。まさに一蹴入魂。地元の期待を背負う選手たちの熱いプレーに、思わず手に汗握ります!
スポーツが人々の心に火を灯し、生きる情熱を呼び起こす。寂れた街が熱狂する光景に心が揺さぶられます。スポーツで人間を、そして都市を再生する。熱血スポ根×ビジネスが融合した人間ドラマです。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)