1-6 私のスキルは何なの?


「私……あんなに高い場所から落ちたのに、傷ひとつ無いんだよねぇ」


 見上げた先の高い事。

 理事長室がある九階の外壁に、ポッカリと穴が空いている。


「それがユニークスキル。貴女が異世界のモノを取込み、得た力です」


 さっちゃん飛んでる! カッコいい!


「私もさっちゃんみたいに、飛べる力の方がいいなぁ」


 遅刻しそうになっても、お空を飛んでひとっ飛びーの、直線距離で来れて楽だから!


「それは……隣の芝生は、青く見えるものですわ。私は桐藤さんの力の方が、羨ましいですもの」


 そうなの? 

 結局私の力って何になるの?


「この力はいったい何なのさ?」


 さっちゃんが降りて来て私の手を取り、ゆっくりと上がっていく。


「ひゃぁあああっ!? 高いっ、高い怖いよさっちゃん!?」


 なにさっ! そんな不思議生物発見みたいな顔!


「いえ。一度落ちて、無傷でしたのに……怖がるのかと思いまして。驚いていますの」


 落ちて無傷でも、怖いモノは怖いの!!


「もう落とさないでね!」


 落とされない様に、さっちゃんの細い手を力いっぱい握っておこう。


 何か『メキメキッ』って音がするね!


「私の手が……潰れてしまいますわ」


 じゃあ落とさないでね(ニコッ)。


         


「ふぃ──死ぬかと思ったよ……怖かった」


 さっちゃんに、九階まで上げてもらったのは良いけど、この穴と地面に空いた穴は……どうするんだろうか。


「さっちゃん、穴どうするの?」


 絶対警察案件になっちゃうよコレ。


「そんなの簡単ですの」


 さっちゃんが、九階の穴から地面に手を向けると……爆心地かと言わんばかりの穴が、塞がっていく。


「飛び散った土や、瓦礫を埋めておけば、問題無いですわ」


 穴埋め達人だ……便利だなぁ。


「壁も直しますから、そこをどいて下さい」


 はいはいどきますね──って早!?


「一瞬で元通りだ……」


 ほぇ──コレ、どうやって戻してるんだろ。


「まだ触らないで下さいまし。押し固めただけなので、形だけ戻っているにすぎませんの」


 そうなんだ。

 てっきり、修復しましょう不思議パワー☆ みたいなモノを、使ってるのかと思ったのに。


「そこまで便利な能力は無いんだね」


 チートスキルみたいな感じで。


「何を考えているか、大体想像は出来ますが、モノを修復するだけなら、別に業者に頼めば良いだけですわ」


 それもそうだよね。職人さんなら、スキル無くても、技術でどうにかなるもんね。


「じゃあ、さっちゃん。私を落とした説明……今度はちゃんと聞くから、お願いね」


 本当に怖かったんだからね?


「すみませんでした桐藤さん。でも、あの魔石が砕けた時点で、貴女が何がしらのスキルを得ている事は、確認してましたので、危なければ助けるつもりでした」


 そうなの? 

 けっこうギリギリだったよ?


「でもさ、私が魔石?を壊す前から分かってたよね。じゃないと、理事長に連れて来ないもん」


 魔石壊したの、理事長に来てからだよ?


「貴女が教室で笑顔になった時、人を超えた存在の様な威圧を放っていたので……まさかと思い、連れて来ましたの」


 私の笑顔を、何だとおもってるのかな?


「へぇ……そんな威圧放ってたんだ……私」


 ミノって何か分からないけど、そんなの食べる前から、私は避けられてるんだよ。

 笑顔を向けたら、皆んなが逃げ出す、(ニコッ)天使の笑顔だよね?


「まさか本当に、スキルを得ている人だったなんて……当たりでしたわ」


 大当たりだね!って違ぁあああう!?


「それで、私のスキルは結局何なの?」


 ユニークスキルとか言われても、分かりませんからね。どんなスキルなの?


「分かりませんわ」


 ほぇ……? 

 分からないの!?


「なんで? さっきスキルを得ている事は、確認したって言ってたのに」


 言ってたよね? 

 間違ってないよね?


「あくまで、スキルの有無を確認したまでですの。どの様なスキルなのかは……鑑定スキル持ちがいれば、確認できますわね」


 それ……結局分からないってことだ。


「さっちゃんは、鑑定スキルって言うの、持ってないの?」 


 持って無いよね……持ってたら、私のスキル分かるもんね。


「すみません。私のスキルは、浮遊と念力の二つだけですの。以前は……いえ、何でも無いですわ」


 何か言おうとしたけどやめた!? 何言うつもりだったのか、凄く気になるなぁ。


「以前は……の後に、なんて言おうとしたの?」


 以前は……鑑定スキル持ってたとか?

 以前は……いっぱいスキル持ってたとか?

 むぅ、教えてくれなさそう。


「今は……言えませんわ」


 そんな悲しい顔しないでよ!


「言いたくなったら、いつでも聞くからね」


 会って間も無い人には、教えれない内容かぁ。

 もっと仲良くなろう!


「桐藤さん。今日は、ここ迄にしましょう。詳細はまた後日、お伝えしますわ」


 そう? 私は今日でも聞くよ!

 あっ……さっちゃん疲れてるのかな。ずっと浮いたままだし、車椅子持ってこなきゃ。


「はい、さっちゃん座って」


 ゆっくりと車椅子に座り、力を抜いている。

 やっぱり何か、デメリットがあるのかなぁ。

 物凄く辛そうだ。


「ありがとう桐藤さん。それじゃあまた、授業が終わり次第、来てくださらない?」


 それは暗に、今日は帰れって事じゃない!?

 でも、無理に聞くのもなんか嫌だし……今日は帰ろう。


「分かったよ。また明日、ここに来れば良いのね!」


 授業終わったらかぁ。

 先にやる事があるから、その後来ようかな。


「それじゃあ帰るね。さっちゃん、また明日!」

「ええ。桐藤さんも……また明日」


 ふふっ、少し恥ずかしそうにしてる。

 それじゃあ帰って、お手紙書かなきゃね!!


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