ミノ肉食べたら異能に目覚めた危ない少女の日常生活

かみのみさき

0-0 【彼の見たモノ信じるモノ】

 君は超能力者の存在を信じるか。

 スプーンを曲げたり物を浮かせたり火を灯したりする、そんな能力を使う者だ。

 私はそんな者は信じない。

 信じていなかった。

 子供の時には憧れたし、自分にも使えるんじゃないかと夢想して練習したりもしたけども、大人になるにつれてそんな者はいない、テレビでやっている事は手品であり、超能力者なんて小説やマンガ、アニメの中にある空想。

 そう理解する様になっていった。

 物理法則は偉大だ。

 上から下に物が落ちる。当たり前の事だ。

 スプーンを曲げたり、物を浮かせたり、火を灯したりするのは全て手品であり、超能力者なんて言う者は存在しない、嘘っぱち、小説やマンガ、アニメの中にある想像の産物。

 世界を理解した気でいた。

 目の前の光景を見るまでは。

 私が万が一にでも死んだ時の為に、このスマホに動画として残す。


 少女が下から上へと飛び上がり"浮いたまま移動して"全く落ちてこない。

 男は走りながら少女目掛けて"手の平から灯した火"を放ち、その距離を縮めていく。

 少女は火を避け、近くのビルに手を添えた瞬間"ビルが捻じ曲がり"中の物や者を潰し、そのビルは捻り曲がりながら"一本の巨大な槍"の様なモノになっていく。

 少女を追いかけていた男はそれを見て立ち止まり、手を上に向けた瞬間、太陽と見紛う程の"巨大な火球"を作り出した。

 少女と男が同時にお互いに向け"ソレ"を放ち激突した瞬間────目の眩む光と爆炎に吹き飛ばされ、そこで私の意識は途絶えた。


 私が意識を取り戻したのは病院の一室。

 右脚の骨が折れ、所々擦り傷は有るものの命に別状は無かった。

 それは良かった。

 良かったのだが、ニュースを観ても、新聞を見ても、ラジオを聴いても、載っていない騒いでいない誰も知らない。

 ビルのガス漏れによる爆発。

 新聞の小さな欄に少しだけ。

 ふざけるなと私は憤りを感じた。

 ふと、私は動画に撮っていた事を思い出し、スマホの中身を確認する。

 病院に運ばれた時、両手で強く握り締めていた様でスマホは無事だった。

 良かった。あったぞ。あれは夢では無い。

 私は杖をつきながら病室を抜け出し、外へと向かう。

 前から車椅子に乗った少女が向かって来た。

 通路が狭い為急ぐ心を抑えつつ立ち止まり、壁に身体を付けその少女を先に通す。

 少女とすれ違ったその時────ビシッと音が鳴った。

 私は気にする事無く外へと急ぎ、病院前に停まっていたタクシーへと乗り込み、行き先を告げ一息吐く。

 そして、念の為にと動画を確認する為スマホを見た瞬間──私は固まった。

 手に持っていたスマホが、まるで石を全力で振り下し打ち込んだかの様に割れ、ヘコみ、ボロボロに壊れていた。

 私は行き先を変更してスマホの修理をお願いし、データの復旧を依頼したが復旧出来ず。

 私はふらふらと杖に寄りかかり、なぜ、いつ壊れたのかを考え、思い出した。

 あの音。

 車椅子の少女とすれ違った時の音。

 まさか──あの少女。

 病院へ戻るが姿が見当たらない。

 一瞬すれ違っただけなので顔もうろ覚えだ。

 車椅子に乗っている人を見かけては顔を確認するがどれも違う様に思う。

 探せど探せど見つからない。

 それ以降、車椅子の少女に出会う事は無かった。

 友人に話をするが信じて貰えず、家族に相談するが病院を勧められ、どこから漏れたのか会社の同僚には馬鹿にされ、気味悪がられる。

 だか私は、あの光景が脳裏から離れない。

 地獄の様な光景。だが、なぜか心美しいと感じてしまった光景。

 私は諦めない。

 追い求める。

 あの光景をもう一度。


『私は必ず"超能力者"を探し出す』


 なので、今の私が超能力者は存在するか、信じるかと問われたらハッキリと答えよう。

 存在してるし信じるに決まっているだろ。

 私は羽紙森一はがみしんいち

 超能力者を追い求める、ジャーナリストだ。


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