第19話 記憶
ここどこだ?
見覚えのある場所だ…。
走馬灯ってやつか…。
「タツキ!お前凄いじゃないか!それでこそ、お父さんの息子だ!」
「お父さん!」
「凄い可能性を秘めている子だ!これで、お前もヒーロ候補だなタツキ!」
父さんが生きてる!
□□□
「タツキ、タツキ!」
「タツキくん!」
聞き覚えのある2人の声…。
目を覚ますと、そこは白い天井の見える病室だった。
そして、俺は病衣に着替えさせられておりベッドで横たわっていた。
「やっと起きたタツキ!!」
ユイは、安堵の表情を浮かべていた。
「ユイ…。それにおじさん…。あれ父さんは…?」
「何を寝ぼけているんだねタツキくん。君のお父さんは数年前に亡くなっているじゃないか…」
ユイの親父は、落ち着かない表情と声でそう言った。
「もしかしてタツキ、ちょっと記憶がないとか?どうしてこうなったとかわかる?」
「大柄の男に銃で撃たれて気絶した」
「記憶は大丈夫そうだね。タツキったら2日も寝てたんだから私、もう心配で…」
ユイの目からは涙がこぼれ落ちていた。
「2日も経ってたのか…。心配かけてすまないなユイ…」
「いいよ!タツキが元気なら!」
ユイは涙を拭って、そう笑顔で答えた。
「ユイ、お前はもう学校が始まる時間だろう。遅れないように早く行きなさい」
「分かったお父さん。タツキ、また放課後来るからね!」
そう言って制服姿のユイは、手を振って俺の病室から出ていった。
ユイの親父は、ユイを見届けた後真剣な表情になりこっちを向く。
そして口を開く。
「タツキくん、君は誰に撃たれた?そして、君はなぜあの場所にいた?」
ユイの親父は、まるで取調べのような言い方で俺を詰める。
自分が、ヘイズとは言えない…。
ヒーロー活動していたとは言えない…。
「それは…学校帰りにたまたま…。大柄な男に撃たれたと思います」
「なるほど。でも、タツキくん緑丘区なんて通学路でもなんでもない場所だろう。何か用事でもあったのかな?」
「たまたま、散歩してただけです…」
俺は圧に負けて口篭ってしまう。
「そうか…。今日から、俺は君が撃たれた事件の捜査を始める。刑事部総出で捜査をする。君も、何か分かったらなんでも俺に相談してくれ。じゃあまずは、体を休めるんだよ。お大事に」
そういってユイの親父は、病室から出ていってしまった。
皆、学校に仕事か…。
傷口を抑え、寝ているとなぜか情けない気持ちになった。
そして、漠然と不安な気持ちになる。
警察は、俺の銃撃事件についてもう捜査を始めた…。
もう、誤魔化せないかもしれない…。
ユイの親父も薄々勘付いているのだろうか…。
ガララ。
考え事をして寝ていたら、病室のドアが開いた。
「体は、大丈夫かしら霧島さん?」
病室に入ってきたのは、ミナミだった。
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