第三章 間章0 世界を縛る法則――魔力変換保存則
人類が「魔法」を魔術から技術へと昇華させた時代、
その礎となったのは、ひとつの理論だった。
それは、万物の変化を制御する“自然魔力法則”――通称『魔力変換保存則』。
この法則によれば、魔力はあらゆるエネルギーに変換可能だが、
決して無から生まれず、消失することもない。
光を作るにも、氷を生むにも、空を裂く閃電を落とすにも、必要なのは“代価”だ。
魔術とは、祈りでも奇跡でもない。
意志を魔素場に打ち込み、構文によって変換を定義し、
媒介を通してその結果を現象として顕現させる――それが魔法行使の全過程。
かつて人々は、魔力の流れを“感覚”で捉え、詠唱で世界を震わせていた。
だが現代は違う。
今では、術式は論理で定義され、詠唱は構文として最適化され、
魔法は制御される“演算”となった。
それでもなお、魔法が万能にならない理由。それが、この保存則の存在だ。
魔力は有限。
術者の身体に蓄えられる魔力(≒活性魔力)には限界があり、
術式の変換効率や媒介体の損耗係数により、同じ魔法でも効果が異なる。
例えば、ある街では術者たちが互いの魔力量を「アルマ」という単位で管理している。
標準的な火球術の発動に1アルマ。
効率の良い術者は、それを0.8アルマで放つ。
未熟者は、1.2アルマを要し、それでも威力が劣る。
そして魔力が枯れれば、術者はその力を失う。
さらに恐ろしいのは、変換を誤れば暴発が起こり、
術者ごと周囲を吹き飛ばすことすらある。
それでも、術者たちは“変換”に挑む。
より少ない魔力で、より大きな効果を――
より安全に、より高速に――
より深く、“世界”そのものに干渉できるように。
その先にあるのは、「魔導炉」と呼ばれる装置の実用化。
物理エネルギーを逆変換し、魔力を工学的に生成する未来技術。
世界は今、魔力を生む技術へと手を伸ばしている。
それは、神の領域への第一歩か、あるいは破滅への扉か。
魔力変換保存則――
それは、世界を制御する鎖であり、同時に、人が神に近づくための“梯子”でもあった。
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🔹補足メモ
Q1.魔力とは何か?
A1.世界の基底エネルギー。可視化されずとも“感じられる”。
Q2.魔法はなぜ代償を伴う?
A2.エネルギー変換に等価交換が発生するため。
Q3.無詠唱や魔法連打は可能か?
A3.高効率変換技術・自然魔力循環が成立すれば、理論上は可能。ただし限界はある。
Q4.この法則を破れる存在はいるか?
A4.「虚数魔力干渉」や「禁忌術式」があるが、通常は逸脱ではなく“例外”扱い。
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