第8話「また朝早くに起きた」
次の日、昨日早めに寝たおかげか、俺は6時に起きることができた。
ロフトベッドを降り、リビングへ。母がまたびっくりしたような顔をした。
「あらまぁ、夜馬おはよう。急に早起きさんになったね」
母が驚くのも無理もない。これまで朝が弱くてギリギリまで寝ていた俺だ。我が子はどうしたのだろうかと思っているかもしれない。
「おはよう、なんか早起き頑張ってみようと思って」
「そう、いいことよ。勉強も大事だけど、寝るのも大事だからね」
いつか聞いたような言葉を聞きながら、俺は朝食のトーストをいただく。今日はコーンポタージュスープもつけて。ギリギリで起きたとしても朝ご飯は食べたい俺だった。今日は余裕があるからゆっくりといただく。
食べ終わって食器を片付けて、自分の部屋で着替える。最初は違和感があった高校の制服もこの数か月で慣れたものだ。
俺はまた7時に家を出た。朝の涼しい空気を自転車であびながら、高校に向かう。
おっと、途中でコンビニに寄ることにする。なぜかお菓子が食べたくなった。俺はチャック付きの袋菓子を買い、また自転車に乗る。この時間帯は人通りも少なくて気持ちがいい。
高校に着いた。いつもの駐輪場に自転車を止め、玄関で靴を履き替えて、教室へ。たぶん誰もいないだろうなと思ったその予感は当たっていた。がらんとした教室を眺め、自分の席に着く。
ぼーっとしていると、ふと昨日のことを思い出した。宮本さんはお返事の手紙を書きたいと言っていた。ちょっとだけ待ってくれと。どのくらい待てばいいのか分からないが、まぁ宮本さんがそう言ったのだ。何も言わずに待っておくのがいいだろう。
「――あれ!? また太刀川くんがいる!」
そのとき、驚いたような声が聞こえてきた。宮本さんだった。
「あ、おはよう」
「おはよう、なになに、急に朝早く来るようになったね。どうしたの?」
「あ、いや、何かあるわけじゃないけど、宮本さんを見習って早く行くのもいいかなと思って」
ほんの少しだけ、嘘をついた。
本当は、宮本さんと二人で会いたいからだ。
朝に強い宮本さんなら、早く来てくれる。しばらく二人になれる時間がある。
俺は、その時間を大事にしたいと思った。
「そっかー、私のおかげってわけだね! もっと感謝してくれてもいいよー」
「あ、う、うん、ありがとう……」
「ふふふ、太刀川くん可愛いね。あ、お手紙ありがとう、読ませてもらいました」
その瞬間、俺の心臓の動きが早くなった。
あ、あの手紙を読んだ……ということは、俺の想いが宮本さんに伝わっている……ものだと信じたい。
どう返事すればいいのか分からず、「あ、う、うん……」と、ちょっと挙動不審になる俺だった。
「それでね、ちょっと待ってほしいって昨日は言ったんだけど、お返事は早い方がいいと思って、私も手紙書いてきたんだ! 受け取ってもらえると嬉しいな」
そう言って宮本さんは鞄から手紙を取り出して、俺に差し出してきた。
可愛らしい封筒に、『太刀川夜馬くんへ』と、これまた可愛らしい文字で俺の名前が書いてあった。
「あ、そ、そうなんだ、ありがとう……」
「うん、でね、太刀川くんも一人で読んでくれると嬉しいな……」
そう言った宮本さんの顔が、少し赤くなっていたような気がしたのは、気のせいだっただろうか。
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