夜の闇は朝陽を求めて
りおん
第1話「夜のラジオから」
『夜をお過ごしのみなさま、こんばんは。こちらケイネットFMからお送りする――』
部屋に置いてあるちょっと古めのラジカセから流れてくるのは、いつものラジオ番組だった。
ただいま夜の23時15分。
夜の闇の中、外からは虫の音が聞こえてくる。今は窓を開けているので、涼しい風にのってその音がはっきりと聞こえるようだ。
人によっては寝ているであろうこの時間。
俺は、すーっと深呼吸をして、目の前に広げられた参考書とノートに目をやった。
広げてはいるものの、頭の中にはちっとも入ってこない。
意識は、ラジカセの方にあった。
『――今日もはじめにこのコーナー。〝あなたの想いを聞かせて〟』
俺の意識がさらにラジカセに向く。
ラジオ番組の始まりにこのコーナーがあるのはいまだに謎なのだが、まぁ面白いのでよしとする。
このコーナーでは、リスナーが語る恋愛相談を読み上げてくれる。
その後、パーソナリティーの男性がアドバイスをくれる。
ある人は、片想いの相手にどうやって告白すればいいのか。
ある人は、お付き合いしている人の心をつかむためにはどうしたらいいのか。
ある人は、お別れの相談をされて動揺しているが今後どう対応したらいいのか。
世の中には恋愛に悩みを抱える人が多いのだなと、改めて感じる。
『――今日の一番最初のメールは、ラジオネーム〝太陽のひかり〟さんから』
そう聞こえた瞬間、俺はガタッと椅子を揺らした。
『――同じクラスに好きな人がいます。手紙を書きたいのですがいい言葉が見つかりません。想いを寄せる人にうまく自分の言葉を伝えるにはどうしたらいいでしょうか』
手に持っていたペンが少し揺れる。どくんどくんという胸の鼓動が手に伝わっているようだ。
『――なるほど、このデジタルな時代だからこそ、手紙という手段は素敵だなと思います。自分の想いを言葉で書くのはなかなか難しいと思いますが、まずはストレートに、今思ったことを書く。相手のどんなところが好きなのか、どんなところに惹かれたのか、小さなことでもかまいません。その中でも分かりやすく、簡潔に伝えるのも大事なのではないでしょうか――』
ラジカセから流れてくる音声を、耳を大きくして一言も逃さないように聴く。
音量を大きくしたかったが家族が寝ているのでこれ以上は無理だ。
どんなところが好きなのか。
どんなところに惹かれたのか。
同じクラスになってからのことを思い出す。
最初は同じクラスであってもほとんど話すことができなかった。
2ヶ月ほど経った頃、席替えがあって、たまたま隣同士となった。
それから少しずつ話すようになり、俺はそのときに見ていた。
――彼女の、お
小さなことでもかまわないと、パーソナリティーの男性は言った。
彼女にとっては笑うなんて普通のことで、小さなことかもしれない。
でも、俺はその小さなことが、大きなことのように感じている。
――俺、
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