有名漫画にガチ感想文書いてみた

田島ラナイ

第1話 終末のハーレム

「男がいなくなった世界で、残された数少ない男に求められるのは、生き延びること、そして繁殖だ」ーーーと要約すれば、それはもう安っぽいSFポルノのように聞こえるかもしれない。でも、そこにはちゃんとした企みがある。しかも、思っていたよりもずっと真面目な顔で、だ。


この作品、表面だけ眺めていれば確かに「男に都合のいい妄想」に見える。美しい女性たちが、男一人に群がる。これはもう、ティーンエイジャーの枕元の夢日記か?と言いたくなる。でも読んでいくと、それが単なる夢で終わっていないことに気づく。


人類の存続、生殖の倫理、国家と科学、個人の選択と欲望。テーマが多すぎて交通整理が追いつかないんじゃないかと思ったけど、意外に渋滞しない。いや、ちょっと信号無視はしてるかもしれないが、それでも物語はちゃんと進む。


物語の軸になっているのは「選ぶ」ということだ。何を、誰を、どんな未来を選ぶか。そしてその選択には、たいてい代償がついてくる。


そういえば、友人が昔、「人類が滅びかけるとき、最後に残るのはエロスだ」なんて中途半端に文学的なことを言っていたけれど、あながち間違っていなかったのかもしれない。


『終末のハーレム』は、そのタイトルから想像される軽薄さをうまく裏切る。いや、正直に言えば、軽薄さもちゃんとある。だけどそれを恥じていないのがいい。人類の危機を、性と倫理のはざまで描くなんて、ちょっとした綱渡りだ。しかもその綱は、よく見ると絹の下着でできている。


ハーレムという言葉の軽さに惑わされず、少し冷静に、でもユーモアを忘れずに読めば、この物語の奥にある不安と希望の温度が伝わってくる。なんだかんだで人間って、最後まで愛とか希望とかにしがみつく生き物なのだ。


エロいことは、悪くない。だけど、それだけじゃ済まされない。


そんな作品だった。

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有名漫画にガチ感想文書いてみた 田島ラナイ @tajima_ranai

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