人権剥奪宇宙旅行理不尽

夜塩

#00 どうして、こんなことに(プロローグ)

 僕は男たちに取り押さえられていた。

 逃れたかったが、それは叶わない。

 僕は決して非力ではない。本来なら、彼ら程度、圧倒できるほどの力がある。

 ではなぜ、逃れることができないのか。

 抵抗することそれ自体が、許されないからだ。

「抵抗するな」

 そんな言葉をかけられた途端、僕の身体から力が抜ける。

 抵抗しない選択をすれば快楽。しなければ苦痛。

 身体が、心が、魂までもが、それを知っている。

 だから、抵抗できない。

 ペットと呼ばれる存在になってしまった僕には、彼らに逆らう権限がない。

 歪んだ笑みをたたえた男たちの視線が、僕の身体を舐めるように見ている。

 その様子を見て、僕は恐怖を覚える。

 僕は今や男ではないからだ。

 女の身体をした未登録ペットが、何やら飢えた男たちに、取り押さえされている。

 そういうことだ。

 僕は、半ば絶望していた。

 どうして、どうして、こんなことに。

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