閑話休題、の十三(千里の道もノリの一歩)

 客先で嫌味を浴びたあと別の客先で話が弾み、事務所に戻ったら別の仕事が湧いて、それでも定時退社を決めたらぎりぎり人身事故にかかって追加で四キロ歩くことが確定した。不幸とやや幸運のサウナに脳がやられそうだ。実際、茹だる蒸し風呂のような路上と冷房の効いた室内の往復には否が応でも整ってしまう。サウナは別に好きではない。

 しかしながらこうも寒暖差があると、もはや笑えてくるのだから末恐ろしい。あと、別に三十分待てば電車は動くのだが、止まっているのが嫌だからと割り切って歩き始めた。諦めも早いが、切り替えも妙に早い。一度事務所に寄ってわざわざ荷物を置きに行ったおかげで荷物が軽いのも幸いした。まったく、人間万事塞翁が馬とはこのことなのだろうか。今隣を電車が通過していったが、これが回送でなければ危うく私が線路に身を投げうつところであった。冗談である。


 というわけで道中ちょっと走った。普通に待った方が賢明である。けれども、目の前に道があると歩きたくなるのが己が習性らしい。アホだなと笑われても、そうだよアホだよとしか答えようがない。

 あ、夕日は綺麗だった。これでプラマイプラスにならんかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る