閑話休題、の十一(雨と音降る街、踊る僕)
人生で初めて、ずぶ濡れになりながら音楽を聴く経験をした。強まる雨のシャワーの中で浴びる爆音は、それはそれは気持ちが良かった。たぶん近くにいる誰よりも大きな声で歌ったし騒いだし踊った。深く聴き込むきっかけになった曲が最後に来たときは、人生で初めて音楽で涙を流したかもしれない。あの頃と変わらずいまもそれとなく感じる閉塞感に、手を差し伸べてくれるようなそんな気がしたのかもしれない。ま、雨が降っていたので誰にも気付かれてない。滅茶苦茶になるまで泣いたわけじゃないし。流したとて、精々涙の一粒程度だ。
で、そんな中で、感情豊かなほうが人生って色々楽しいんだろうな、と正直思った。いや、別に心の底から笑ってないわけじゃなくて、単に負の感情の発散が下手くそなのだ。基本的に溜め込んでそのまま消化しているが、調子が悪いと腹を下したりする。このところは特にそういったことはないが、これまでに幾度かそういうことがあったので、今日あんなことを思ったというわけである。
こんな性分だから、よく心がないだとか感情に乏しいだとか言われる。そんなことはなくて、単に発露が苦手なだけである。でなければ凹ませる勢いで拳を机に振り下ろしたりしない。ちょっと感情を出すのが苦手で、勘が少々冴えていて、思ったより人を見ているだけの人間である。
明日は誰かの前で泣き叫んでやろうか。しないけど。泣くような用事ももう長らくないし。
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