【20年分愛し合わないとね】
「昔のままね……。」
「そうですね……。」
20年振りに自分達の部屋を訪れた。
掃除はされているが、何もかもがそのままだった。
棚に置かれたウエディング写真。
壁に貼られた家族写真。
懐かしい思い出の数々。
それらの品々に囲まれ、抱き合う二人。
「待たせてごめんなさい、シャスタ……。」
「謝らないで……。今はこうして逢えたんですから……。」
優しく口づけられ、シルビアは微笑みを返す。
「貴女の事を聞かせてもらえますか?」
シルビアはハウエル家について話した。
信心深い両親と二人の兄がいる事。
16歳で記憶が戻り、家族に生まれ変わりを告げると、信心深さからその事実を受け入れて、それでも変わらず接してくれた事。
成人するまでは一緒にいようと約束し、別れの日には涙ながらも笑顔で見送ってくれた家族達の事を話した。
「素晴らしい家族に育てられたんですね。そのうち会いに行きましょう。」
「ええ。でもお兄ちゃん達には気をつけて。私を溺愛してたから……何するか分からないわよ。」
笑ってシルビアが言う。
「お兄さん達も使い手ですか?」
「ううん、違うわ。何て言うか……悪知恵が働くって言うの?精神的なダメージを与えるのよ。」
「怖いですね……。気をつけます。ところで、記憶が戻ってからどうしてたんです?4年前に戻ったのなら連絡してくれても良かったのに……。」
「大人になるまで逢わないと決めてたの。連絡したら逢わずにいられないと思ったから我慢して……。」
「じゃあ、貴女も辛かったんですね。」
「そうね……。でもその分修行に励んだわ。新しいスキルも身につけたわよ。」
射撃を覚え、剣術を学んだ。
今では命中率もプロ級だと言う。
「私もいろいろ覚えました。実践はまだですがイケると思いますよ。」
完全な人間になる前に、必要なスキルを全てインプットしていたのだ。
「ずるいわねぇ。インプットだけで強くなれるんですもの。私にも教えてくれる?」
「いいですよ。手取り足取り教えてあげます。」
そう言って、シルビアの手を取りキスをする。
彼女はその行為で気持ちが高ぶってしまったようだ。
「シャスタ……。他にも知りたい事があるでしょう……?」
「え?」
顔を上げ、彼女を見て戸惑った。
妖しい色気が漂う美しいシルビア。
シャスタの手を取り、後ろ向きのまま歩き出す。
妖艶な微笑みに引き寄せられ、着いたその場はバスルーム。
「私の身体……知りたいでしょう……?」
首に腕をまわしてキスをする。
愛しい彼女の変わらぬキスと、妖艶な雰囲気に抗えず──
互いの衣服を脱がせ、シャワーに打たれながら愛し合う。
立ったまま結ばれて──
「愛してる……わ……シャスタ……」
初めての痛みなどすぐ消えた。
彼の温もりと力強い突き上げ。
20年振りの感覚に力が抜ける。
「シルビア……貴女を……愛してます……」
彼女の表情、悶える姿も求める力もすべてが同じ……。
昔と変わらず愛し合う二人だったが、なぜか達する事を拒むシルビア。
なぜ我慢しているのか分からない。
負けたくないと言う彼女の言葉を聞き、そういう事かと動きを止める。
快楽の波が止まり、シャスタの顔を見た。
「勝たせませんよ。覚悟は良いですか?」
にっこり微笑む彼の顔を見て、一生勝てない事を悟ってしまった。
「ええ……諦めるわ……。」
勝負を捨てた彼女はあっという間に達してしまった。
力の抜けた彼女を抱き締め精を放つ。
そのまま口づけを交わす二人。
落ち着いたシルビアがくすくす笑う。
「どうしたんです?」
「今度もやっぱり勝てないな~って。」
「そうですね。私の今度の身体は以前より強くなっているみたいですよ。ちょっと余裕でした。」
「あっ、そんな顔して!もう、悔しい!」
勝ち誇った顔を見て悔しがる。
「後で一試合やるわよ。こてんぱんに負かせちゃうから!」
「うわ、それはちょっと。手加減して下さいよ……。」
「知らな~い。だって悔しいんだも~ん。」
その素振りは甘える時のマクファーソンだった。
「ああ、可愛い!」
ギュッと抱き締め、彼女の額にキスをする。
「私は幸せ者ですね。私の愛した三人のシルビアと一緒にいられるんですから……。」
「三人の私?」
「ええ。クレルモン、マクファーソン、ハウエル。貴女は三人の特徴を併せ持つ最高の恋人です。」
「ありがとう……。ね、どの私が一番好き?」
「どの貴女も一番です。それぞれが愛しくて……。みんな愛してますよ。」
「私も愛してるわ。コンピュータだった貴方も前の貴方も……みんな愛してる。」
再会の喜びは尽きない。
微笑み、見つめ合い、キスを交わす。
二人がバスルームを出たのは5時間も経った後だった。
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