銀を飲み込んだ吸血鬼の話
小森悠大
第一章 誰かが連れてきた吸血鬼という名のポンコツ
私よりも小さい存在が、元気よく挨拶してきた。
「……あら、はじめまして。ところで、あなたは誰? 簡単にこの家には入れないのだけれど。結界も張ってあるし」
「私、嵯峨野っていいます。えっと、吸血鬼なんですが、この度、黒野家のお手伝いとしてしばらくの間、お世話になることになりました。お嬢様、よろしくお願い致します」
「……わかった。俺は、黒野青也。よろしく、お手伝いさん」
これが、このポンコツ吸血鬼との出会いだった。父親で政治家でもある黒野透が拾ってきたらしく、弱点である銀を、体の中に埋め込んであるから、人間の俺でも力で押さえつけられるから安心だとか。
でも、吸血鬼って気持ち悪い。最初の感想はそうだった。人間の血を吸うことでしか生きられない存在。そのくせにやたらと寿命は長くて、夜にしか生きられない。お父様は大丈夫だっていうけれど、本当にそうなのか、この時は不安でしかなかった。それが、黒野青也の嵯峨野に対する第一印象だった。
黒野家はこの地域の政治を牛耳っている政治家の一族だった。
少しコンパクトな屋敷とも言えるこの家には、どこかしらの神社に張ってもらった結界があるらしく、それを緩めてもらったということになる。
後で聞いたところ、この吸血鬼が入ってきた後にまた結界をり直してもらったらしい。吸血鬼や他の魑魅魍魎は結界を越えることができない。つまり、この屋敷から出ることもできない、と。私はそんなものを信じていなかったが、どうやら本当に効果があるらしい。
なぜこんな厄介者を黒野透が受け入れたのか、理由はよくわからないが、家の中の雑用や、留守中のハウスキーパーなどをしてくれるらしい。
だが、厄介者であってもこの家の主人がよしとしたのだ。少し嫌な思いはあったが、この家の中で、この厄介なチビとこれから一緒に生活することになる。
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