あの夏を思ふ

小烏 つむぎ

あの夏を思ふ

ギラギラと白む風景 その中で

      浮かぶ君の手 自転車を押す


誘われてふたりで帰る通学路

      蝉しぐれにまぎれ 呟いてみる

        す き



背中越し 近づく気配の君のゆび

      知らぬふりして 待ちわびている



ほうと吐く 吐息 湿度の高きこと

      おのが想いの深さこそ知る


触れるゆび 重なる視線

        重なる手

          傘に隠れて 重ねる吐息



白無垢にしようか ドレスがいいかしら

      どちらも似合うと君が微笑む



縁側の蚊やりのけむり ゆらゆらと

      爪切る君の肩に ほほ 寄す


白米の炊ける匂いに口おさえ

      君の土産は 大量のレモン


 


青空に登るけむりを見送りて

      うそつき

           と 五回 呟いてみる


 


とうきびに齧りつきたる幼子の

      爪の形に 君が面影






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