駅ピアノ 🚊

上月くるを

駅ピアノ 🚊



六月の朝日はのぼるソラシドと

夏暁や弾くひとを待つ駅ピアノ


鶏鳴くや青葉の奥に青トマト

木洩日は空のしづくや石菖蒲


夏風や新築なりし考古館

一面の青田に雲と太陽と


郭公や己が声に聴き惚れて

電線に寄り添ふ鴉あいの風


玉ねぎの収穫祭の畑かな

捩花の捩れて愉し空の青


露涼し家畜を尊敬するをとこ

をとこ待つ牛の鼻づら雲の峰


ながしはえ歯茎をなぞる舌の先

まなこ閉ぢ黄雀風を聴いてゐる


老鶯に湯屋のまどろみ覚されぬ

夏雲や帰路はことなる景色見て


うす青き腕のじやうみやく白日傘

風呂に湯を半分入れて枇杷を食ぶ


青あらし風がロックをかき鳴らす

サザンクロス貧の矜持は汚されず




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