第37話 樹氷の森と毒の謎

 やり過ぎました。


 多分、体育館一つ分くらいの面積の木々が真っ白になって分厚い氷に覆われました。また、地表からはタケノコみたいに氷がはえていたりしてます。


「さあ、みなさん。森の氷を切り取ってお鍋に集めてください。ゆっくり融かして水を水筒に貯めましょう。貴重な氷なので大切にしてくださいね」

「はーい」

「了解」

「わかったー」


 クラスのみんなは鉈やナイフを使って森の氷を切り取り削ってます。やり過ぎたので、私はまたエヴェリーナ先生先生に叱られるかもしれません。


「ティナ。お見事です」

「本当ですか?」

「ええ。よくできました。これで当面の水は確保できそうです」


 良かった。凍らせすぎて叱られると思ってたのに褒められちゃった。


「ティナ。凄い魔力だな。私の親友は本当に頼りになる」

「本当? 私って頼りになるの?」

「本当だ。ティナと一緒ならどんな困りごとでも解決できそうだ」

「うん。ありがとう」


 ウルファ姫にも褒められちゃった。でへへ。


 クラスのみんなは釣りをしたり、浜辺で貝掘りを始めた。食事の材料を確保するって事ね。私たちも頑張って獲物を探さないとって思ったら、ウルファ姫は釣りざおを用意して釣りの準備をしていた。


「姫は釣りができるの?」

「執事にやり方は聞いた。仕掛けはあらかじめ用意したから、餌を探して大物を狙うんだ」


 なるほど。

 目の前は砂浜。左側には少し岩がごつごつしている場所がある。姫の説明によると、そこへ行ってミミズみたいな生き物を探して餌にするらしい。ちょっと気持ち悪いんだけど、興味はあるかな。魚釣りもしたことがないしね。


 スコップとエサ入れの小さなバケツを持って、姫と一緒に岩場へと向かおうとした時、エヴェリーナ先生に呼び止められた。


「ごめんなさい。貴方たちには手伝ってほしい事があるの」

「すまないが協力して欲しい」


 エクルース先生にもお願いされてしまった。


「どういう事でしょうか? 何の協力ですか?」


 やや不機嫌そうな姫がエクルース先生に質問した。私もちょっと不機嫌かもしれない。だって、姫と一緒に釣りをする貴重な時間を邪魔されたんだから。


「本来はこのサバイバル合宿を中止すべきなんだ」

「え?」

「ならどうしてティナに魔法を使わせたんですか?」


 当然の疑問だ。ウルファ姫の質問に、エヴェリーナ先生は頷きながら答えてくれた。


「帰りの飛行船がね。明日の正午になるのよ。だから、今日一日はここで我慢しなくちゃイケナイ」

「え? もう連絡が取れたんですか?」


 エクルース先生が笑顔で頷いてる。


「通信魔法は私の得意とするところだからね。私も魔法使いの端くれなんだよ」


 白髪頭で頼りないと思っていたエクルース先生が魔法使いだったとは知らなかった。先生が突然光り輝いて見えた。外見だけで、先入観だけで人を判断しちゃいけないね。


「そこで当面の水をティナ君の魔法で確保し、今夜の安全を図るために動いて欲しいのだ」

「はい、わかりました」


 などと返事をしたものの、私たちは何をしたらいいのだろうか?


「まずはエヴェリーナ先生と一緒に、毒が入れられていたという湧き水を調べてきて欲しい。そして、その先にある鬼族の祠を調べてきて欲しいのだ」

「鬼族のほこらですか」

「ああ、そうだ。鬼族の祠だ」


 何の事かわからない。それが毒と関係あるのだろうか。


「さあ行きましょうか。こちらはエクルース先生にお任せします」

「ああ、任せてくれ」

「あなたたちはこっちよ。地面が凍ってるから気を付けて」


 エヴェリーナ先生は凍り付いた森の中へと入って行く。私とウルファ姫は足元に気を付けながら、ゆっくりと先生の後を追った。

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