第22話 迷子の二人

 私が放った魔法は大きな火球となり弾けた。その瞬間、周囲の雪原は消え去り、うす暗い荒野となった。私とウルファ姫はその荒野の中でぽつりと立ちすくんでいたのだ。


「雪、無くなっちゃったね」

「アレは全て幻覚だったんだ」

「幻覚を見せられただけじゃなくて、思考も操作されていたみたいだね」

「そうだな。あのまま夢の中で幸福な時間を過ごさせ、試験は不合格になるという罠だったんだろう」

「うん」


 ウルファ姫と一緒になって幸福になりたいとう私の願望を逆手に取られたって事よね。私のせいで姫の足を引っ張るところだった。気をつけねば。


「ところでアレは何だったのかな?」


 私は焼け焦げた大量の輪……多分それが神職に化けていた……を指さした。細い金属製の輪が幾つも組み合わされて人の姿となっていたようだ。


「わからない。中に術者が入っていたのかもしれないな。ゴーレムじゃないのは確かだ」

「これも試験の課題って事なの?」

「多分そう。反撃されると思っていなかった」

「舐められてたって事ね」

「そういう事だ。中に誰が入っていたのかは知らないが、受験生を舐めると痛い目に遭うと思い知らせねばな。ティナ、思いっきり魔法を使っていいぞ」

「うん。わかった。思いっきりやるよ」


 そう、私は先天的に魔法力が強いみたいなんだ。だから、魔法の実技ではいつも手加減している。だから、手加減せず思いっきり魔力を放出できるなんてめっちゃスッキリするんだ。


「ところでウルファ姫。ここ、何処なの?」

「わからない。試験会場内である事は確かなんだが、私たちが先ほどまでいた教会がどこなのかさっぱりわからない」

「もしかして、迷子になっちゃったのかな?」

「そうだな」


 姫が普通に肯定した。本当に迷子になってたらヤバいよ。試験は不合格じゃない。


「ほらあそこ」


 姫が指さす方向に大きな岩があった。距離は500メートル位で、多分、三階建ての家くらいの大きさ。


「あの上に立ってから周囲を確認してみよう。試験会場の廃村からそう離れていないはずだから」

「そうかもね。じゃあ行こうか」


 私は姫の手を掴んであの大岩へと向かった。


【続く】

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