真夏の観測者たち
紫音みけ🐾書籍発売中!
プロローグ
不可思議な現象
高校の同級生が、交通事故で亡くなった。
私のクラスメイトである、
背が高めで、もっぱら喧嘩が強いという噂があった男の子。周りの男子たちからは恐れられていて、教室では一人で過ごしていることが多かったように思う。
彼とは同じクラスということ以外に、私はほとんど接点がなかった。
けれど昨日、珍しく彼と話す機会があって。ちょっとだけ、彼の意外な一面を知ったばかりだった。
だから、彼が亡くなったという報せを聞いたときはショックだった。
こんな悲しい事故があっても、翌日は学校があるので休むわけにはいかない。彼のいなくなった教室で、まるで何事もなかったかのように授業を受けるのは、想像しただけでも嫌だった。
けれど、
「……あれ。遠野くん、どうしてここにいるの?」
いざ登校して教室に入ってみると、そこにはなぜか、昨日亡くなったはずの遠野くんの姿があった。
幽霊なんかじゃない。
周りのみんなも、彼の姿が見えている。
そして当の彼は私を見て、思いもよらぬことを口にした。
「
彼の中ではなぜか、私の方が死んだことになっていた。
私と彼との間で、認識の食い違いが起きている。
何か、説明できない現象が起こっている。
不可思議で、きっと一生忘れることはない、私たちの夏が始まろうとしていた。
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