第6話
「うへぇ。痛い」
耳、鼻、血液。
相変わらず酔ったような違和感が拭えない。出てきたはいいけれど、めんどくさくなってきた。合流前に済ませないといけないのが、市立■■学園関係者への報告という名のやりとり。
「で、オレは? 同行? 別行動?」
「いや? 私ひとりで行ってくるかな。先に合流して。あー、あと私、電車で帰ることも伝えておいてね。伝え忘れたらめんどくさい書類を押しつけるからね、忘れんなよぉ」
こんなに気分が優れないとまともな会話ができる気はしないけれどもするしかない。脳がこぼれ落ちてはいないだろうか、いや大丈夫だ。
報告もすべきところが、山ほどあるのだから、不平不満を言うのは職務怠慢だろうな。どっちにしろ、実地はこの案件に関しては今回が最後。人でなしの私には、おそれおおい役回りといったところか。
暴力なら大歓迎、暴言なら今までに比べたらきっとましだ、散々すべてを話さなかった彼らにも比はある。
自分たちは安全圏からあーだこーだと好き勝手言い、他人任せにしておいて。意見だけが通るだなんて思うような、クソみたいな奴の言い分を聞くつもりは毛頭ない。
アスファルトに、肉片がずるりと落下するのを無視して歩く、気が遠くなるほど脳は酔っているようだった。
「⋯⋯溶⋯⋯けそう⋯⋯」
現段階で解ったことはただひとつ、今回の案件の怪異はおそらく市立■■学園(旧▲▲学校)に根差したものだということ。
解くこと自体には意味がない。
ただそれが事実であるならば無駄骨を折ったことになる、都合良く利用されてやる気はない。正義という言葉ほど恐ろしいものはない、悪意の方がかわいいものだ。
不自然なほど、学校までの道のりには人通りが少ないようだった。
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「良いご身分だなあ?」
ご機嫌ななめな顔がそれ以外の表情をするのを実のところあまりみたことはない。
「はい? 不手際あったっけなぁ。怒られる理由ならいくらでもわいてくるので、どれに対する言い分かはかりかねてるんですが?」
とどのつまりはそう。
「報告は普通するよなあ? 何故報告は俺をすり抜けていくのか聞いてるんだけど、よお?」
一理ある、か。
「そない言われましても、田合さんに説明するためにわかりやすくわざわざ噛み砕くだなんて。めんどくさいから。⋯⋯ん、と。噛み砕く必要なければ説明できる範囲で報告しますけど、どうします?」
怒ってるだろうことは見なくても容易にわかる、そういう物言いをしているのだから、至極当然だ。敬意は持っていないのかといわれると否、ただ向き不向きという観点からこんな言い回しにならざるを得ない。ついでに私はこの頃余計な一言が多いのも事実としてある。
「あ? 説明しろよ」
「報告書まとめるついで半分もあるんですけどね、説明するのに言葉だけだと手間取ってしまう気がするんで会議室の方で構わないなら。あと途中で、やっぱりもう要らんとか言っても聞くきないですよ?」
やっぱりもういいと説明している最中に何度か投げ出されたことが記憶にある、前もって釘をささなければ私は無駄な労力を払うことになる。それは回避しておきたい。
「馬鹿にしとんのけ?」
そう告げて威圧的態度をとってこようが知ったことではない。
「事実でしょ?」
事実を言って何が悪い。
2、3日、確かに空けていなかったことを悪いと思っていないわけではない。あとで合流すると言って、実際に事務所に現れたのが今日、そりゃ反感をかうのは仕方ない。良いご身分だと田合さんが口にしていたのは、そのことにだろう。実際、その間一切、私は連絡をとってはいなかったから。
便宜上会議室と呼ばれているけれど、ほとんど会議目的で使われたことはない。良くある長机とキャスター付きの椅子がロの字に並んでいて、部屋の入口からみて、正面奥にキャスター付きのホワイトボードが置かれているから。
もっともらしい名前で呼ばれているだけ。もちろん、部屋に入室できる人数が多いというのもあるけど。
田合さんが左縦の机の手前側に腰かけふんぞり反っている。椅子だけ適当に掴んでホワイトボードと田合さんの中間あたりに置いて座って、ため息をひとつ。
「今回の案件の怪異に関する、大雑把なおさらいまじえた方が報告内容の適切な理解をし手もらいやすいと思うので。少しその辺付き合ってもらいますよ?」
そして私とレンレンのした
そういう意味でため息を吐き出したわけだ。
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