(補完)第四十一章 ベルセルクヒーラー②

 次の街へ来た。ここも指示はないが加護持ちが多い街だ。

 そこでアリエスが縦横無尽に駆け回っている。散発的な攻撃を与えて逃げ回るスタイルだ。散々ヘイトを取った上で蛇女のスピードを生かして翻弄している。

 おおう。そうじゃないんだってばよ。

 確かに魔物に体力の概念はない。この戦い方で人間の体力を減らし自身の耐久も確保できる。先の突撃型よりはマシな戦い方だが、アリエスの動きがこちらにも把握できない。地味にあの滞留魔素を放っているせいでこちらも近づけない。対魔法使い対策なのだろうがそれはこっち(魔物側)にも効くんだってばよ。

 そんなわけで今俺は盾を弓にして黒曜石の矢を放っている。こうでもないとあの動きに対応できん。シノの方は問題なさそうだな。滞留魔素にも対応して魔法を放っている。流石は魔法のスペシャリストと言う所か。対応できない俺は滞留魔素に近づくことが出来ないでいる。

 それにしてもアリエスは本当に止めを刺さない奴だな。次から次へと標的を変えて食い散らかしている状態だ。ヘイトを取るのは良いがトドメは刺しても構わんのだが。手柄を寄越すスタイルなのか。それとも人間への恨みがアリエス自身を暴走させているのか。判断がつかんな。

「アリエス。トドメを刺しても構わんぞ」

 迷った俺はアリエスに大地の支配で生み出した黒曜石の剣を渡す。棒術があれだけ使えるのだ。剣が使えないことがないだろうと踏んでいたのだが・・・。

 不味いな。

 剣を持ったアリエスが途端に挙動不審になる。使えないのではない。扱えるが切れないのだ。アリエスが爪で俺を切り裂いたときのことを思い出す。こいつは典型的な刃物が使えないタイプか。鈍器の方がいいだろう。俺は片手で使える石棍棒を渡すとアリエスに投げて寄越す。

「そっちを使え。剣は捨てていい」

 ? アリエスが両手に黒曜石の剣と石棍棒を持って完全にフリーズしている。俺は弓を盾に変えると相棒を抜く。そしてアリエスを狙う人間に切りつける。

 これは本格的にマズイか。

「アリエス。武器を捨てろ。下がれ」

「ですがわが父。私は、まだ・・・」

「命に従え!!!」

「は、はい。命に従います」

 武器を捨てて下がるアリエス。

 これはどういうことだ? これを見るに人間に恨みを持って嬲り殺しという線は無くなった。刃物が使えないというのも分かった。だがなぜその後戦えなくなる。

 なにか俺は見落としているのか?


 

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