俺の友達が色々とおかしい件について
カムキリモドニ
友人がまた貴族に喧嘩を売ったらしい
―――ムートパス王都総合学園
それはラペレ王国の王都ムートパスに建てられた学園であり、魔法や剣術の他に医学、鍛冶技術、呪術など様々な分野を専攻して学ぶことができる
また、国内外からも生徒を募集しており、種族問わず多様な生徒が在籍している
そして、そんな学園では今日も―――
「本ッッッッッッ当にッ!申し訳ッ!ありませんでしたァッ!!!」
―――一人の生徒の謝罪が響いていた
「あ、あぁ…お前の謝罪は受け取るから…もう行っていいぞ……」
「アザッス!本当にすんませんしたッ!」
貴族に対してもう一度頭を下げ、その場を後にする
大変お見苦しい所をお見せしてすみません
そしてはじめまして、俺はイヴと申します
現在俺は、貴族に対して謝罪をしていた…なんも悪いことしてないのに、だ
一体何故、俺がこんなことをしていたのかというと―――
「いや〜すまん!ホント助かった!」
「次やったら殴るぞテメェ」
「マジで悪かったって!反省してるから!」
―――この男、アノイの尻拭いをしていたからである
アノイは俺と同じ平民であり、田舎からやって来たらしく、無知なところが結構ある
しかもノンデリな所があるので、相手を怒らすことがしばしば…それにキレた貴族に俺が謝るということをなんども繰り返している。もはや確信犯じゃないだろうか
「ちなみに反省してると言うが、これで何度目なのかわかってるか?」
「うぇっ!?えっと…それは…………5回?」
「惜しい、7回だ。そしてその内謝罪で済んでるのが今回合わせてたったの2回だけだ」
「うぇッ!?ちょっ…!」
アノイの頭を掴み、床に強く叩きつける
アノイは何か言おうとしたが、その前に硬い床に顔をぶつけた
そしてアノイの側に座り、話しかける
「残り5回は全て決闘で勝ったから許してもらえたんだよ、いい加減学習しやがれ馬鹿野郎」
「す、すまん…」
「あ゛ぁ゛?」
「すみませんでした!もう喧嘩をふっかけるような真似はしません!」
アノイは顔を上げずにそのまま綺麗な土下座をして謝る
なんだよ、ちゃんと謝れるじゃないか…それなら自分で謝れよ本当に
「はぁ…まぁ幸いにも上流階級の貴族には喧嘩を売ってないから許してやる、次からは気をつけろよ」
「…ほ、本当か?イヴ?」
「あぁ…ただ、次は無いからな?」
「ありがとうイヴ!やっぱりお前は最高の友達だ!」
「うわっ!抱きつくな暑苦しい!」
…なんだかんだ許してる俺は結構、甘いのかもな
〜翌日〜
「気をつけ、礼」
『失礼します』
「では気をつけて帰るように」
「…ふぅ」
授業が終わり、クラスメイトがぞろそろと帰る中、俺はもう一度着席して息を吐く
「…あのアノイが問題を持って来なかった……だと……!?」
なんてことだ…これは由々しき事態だ……!
いつもなら『イヴぅ…貴族に喧嘩売っちゃったぁ…』ってすぐ泣きつくのに…昨日の言葉は本当だったのか…!?
だとしてもアノイが何も問題を起こさないなんて…明日には世界が滅ぶのかもしれない…!
「不味いな…まだ未練があるんだが」
「へいへ〜い、なんで頭を抱えてるんだい?ボクに相談してみたまえよ」
「ん?あぁ…お前か」
世界滅亡のことを考えていると、横から声を掛けられた
声を掛けてきた方を見ると、制服の上からローブのようなものを羽織っている小さな少女が立っていた
身長は大体145cmくらい、思わず『どうしてここに子供が…?』と思うが制服を着ている通り、ちゃんとここの生徒なのだ
「…今、なんか失礼なこと考えてなかった?」
「気の所為だよ気の所為…それで、ウェネカがどうしてここにいるんだ?」
「毎度ヘセと呼んでっていってるのに…相変わらず硬いね、君は」
「お前の仲間と思われたくないんだよ」
「え〜?そんな悲しいことを言わないでよ、ボクと君の仲だと言うのにさ」
彼女の名前はヘセ·ウェネカ、ラペレ王国のディヴィネ領の令嬢である
そして、俺を困らせる問題児の一人でもある
ちなみに問題児は3人、目の前のウェネカとノンデリアノイ、そしてもう一人いる
もう一人については今度紹介するとしよう
「それで?なんでここに来たんだ?」
「あぁ、それはね…ほら、入りなよアノイ」
「あ、あぁ…」
「アノイ…?」
ウェネカの声で教室に入ってきたのはアノイだった
しかし、なんかすごい顔が青い…何故だろう、嫌な予感がする
「…お前、顔が真っ青だが何をしでかした?」
「ま、待てよ!何で既に俺がやらかした前提なんだよ!?」
「へぇ?じゃあやらかしてない…と」
「い、いや…やらかしたが…」
「やっぱやらかしてんじゃねぇか」
しかし、今日はいつも以上にしどろもどろになってるな…もしかしてだが、マジでやりやがった?
い、いや…流石に昨日釘刺したばかりだから上流階級にはふっかけてないはずだ…
「また貴族に喧嘩をふっかけたんだよ、しかも上流階級に」
「ちょ、ヘセ!?」
「君がいつまでもウジウジしてるから代弁してあげたんだよ、言われたくないなら自分から言いなよ」
「へぇ…?そこら辺の貴族では満足しないから上流階級の貴族に喧嘩を…随分と俺を舐めてるようだねアノイ君?」
「ち、違…」
顔をさらに青くするアノイを他所に、ウェネカに問いかける…この場合だとウェネカの方が相手を知ってるだろうし
「ちなみに、コイツは誰に喧嘩を売ったんだ?」
「あぁ、フォティス嬢だよ」
「………は?」
今、聞きたくない名前が出された気が…
本当に言ってるのか?だとしたらアノイは私刑に処すぞ?
「すまん、聞こえなかった。もう一度言ってくれないか?」
「フォティス嬢だよ」
「……ハハッ、どうやら幻聴が聞こえるよあだ。何故かフォティスという名前が聞こえたんだが」
「安心するといい、君の耳は正常だ。幻聴でも間違いでもなく、アノイが怒らせたのはあの“龍姫”アニケ·フォティス嬢だよ」
その言葉を聞き、俺は膝から崩れ落ちた
冗談じゃねぇよ…なんて相手に喧嘩売ってんだよアノイィ!
下級貴族なら全然許せた!伯爵ならまだギリギリ許せたさ…だが何故だ!何でよりによって公爵に喧嘩を売ったァ!?
「ちなみにキレた理由はアノイがフォティス嬢に向かって『君よりイヴの方が強そうだね』と言ったからだよ。あと決闘以外は認めないだってさ」
さらっと燃料投下するなよウェネカァ!
―――――――――――――――――――――
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俺の友達が色々とおかしい件について カムキリモドニ @kamukirimodoki
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